研究について

研究成果

壁に作用する土圧に及ぼす壁面摩擦の影響

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 0916 1998年09月
執筆者 菊池喜昭、吉野博之
所属 土質部 地盤改良研究室
要旨  基礎構造物は、土圧に抵抗したり、土圧を利用したりする構造物であり、数多く築造されてきている。このため、土圧に関する研究は古くからなされており、実用式も提案されている。しかし、土圧を測定することは比較的難しく、設計値と実測値の比較は不十分な状況にある。実験的にみても壁面に垂直な合力もしくは応力分布を測定した事例が中心であり、壁面に作用するせん断力については合力を測定した例がいくつかある程度で、壁面摩擦角についての詳細な検討は十分ではない。  そこで、壁面に作用する垂直方向とせん断方向の荷重を同時に計測できる二分力計を用いた土圧実験を行い、壁の移動に伴う壁面摩擦壁の変化の様子を調べ、壁面摩擦がどのように作用しているかについて検討した。その結果、以下のような結論を得た。 (1)静止状態及び主働状態では壁面摩擦係数は深度方向にほぼ一定である。今回の実験では、これらの状態のときにはほぼ完全に摩擦力が発揮されているようであった。 (2)壁が下端を中心に回転挙動をしながら静止状態から受働状態へと変化する場合には、壁の上部から受働状態に達する。受働状態に達した時の上部の摩擦係数はほぼ一定値になっている。この時の受働状態の壁面垂直応力係数は実測値と理論値で良い対応を示した。 (3)壁が下端を中心に回転挙動をしながら静止状態から受働状態へと変化する場合には、壁に作用する摩擦力は大きさおよび向きが変化する。この時、壁面の最大摩擦係数の違いによって、変化の仕方が異なる。 (4)受働状態に達する過程での壁の各深度に生じる壁面垂直応力と変位の関係は非線形である。また、この壁面垂直応力は壁面摩擦係数の影響を受けているようである。
全文 /PDF/no0916.pdf