研究について

研究成果

久里浜湾における長期検潮記録解析

発行年月 港湾空港技術研究所 報告 035-04-01 1996年12月
執筆者 永井紀彦、菅原一晃、渡邉弘、川口浩二
所属 水工部 海象調査研究室
要旨  本報告は、1958年2月から1995年12月までの約38年間における港湾技術研究所構内検潮記録をとりまとめたものである。このように長期間にわたって、同一条件で継続してとりまとめられた潮位観測結果は、他に類例を見ない貴重なものである。ここでは、日々の観測によって得られた約33万データにのぼる検潮記録を整理して、月平均水面および年平均水面の経年変動を求めた。この結果、国土地理院第10845号一等水準点平均成果(1969年と1990年の2回公表)と、同水準点と港研検潮器零位との間の基準点測量(1975年と1992年の2回実施)から東京湾平均海面を基準として推定される地盤沈下量を考慮しても、平均水面(東京湾平均海面を基準)が+2.03mm/年の割合で上昇していることがわかった。  あわせて、最大両振幅が15cmを超える180ケース(うち4ケースが津波)の長周期波記録の抽出を行ったが、もっとも両振幅の大きかったものは、チリ地震津波(1960年5月24日)の200cmであった。チリ地震津波の周期は、ゼロアップクロス波別解析およびスペクトル解析の結果約80分であったことが確認された。チリ地震津波の他にも、津波、台風、低気圧等に伴う主要な観測長周期波形記録を紹介したが、周期2ー3分の津波の長周期成分を捉えたものまたは研潮所前面岸壁・東京電力発電所護岸間のモードの固有周期に依存して生起する長周期波を捉えたものと、周期15分程度の久里浜・金谷間のモードの固有周期に依存して生起する長周期波が、多く観測されている。  また、各年毎に1時間後との観測記録ともとに調和分解計算を実施した結果、主要4分潮の振幅の年毎の変動は小さく、安定性が高いことが示された。Zo(主要4分潮の振幅の和)の値は、平均が95.335cm、最大が1965年の96.621cm、最小が1976年の94.46cmであり、変動の標準偏差は0.492cmであった。
全文 /PDF/vol035-no04-01.pdf