研究について

研究成果

飛沫の発生と輸送に関する二次元水路実験

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 0843 1996年09月
執筆者 浅井正、西守男雄、村上和男
所属 海洋環境部 環境評価研究室
要旨  飛沫とは、風や波により乱れた海面から飛散した水滴が海塩粒子として空中に浮遊する状態にあるものをいう。これらの陸上部への伝搬が周辺地域に塩害をもたらす原因となっており、塩害を抑止する上で沿岸域での飛沫の発生およびぞの輸送のメカニズムを室内実験により明らかにするとともに、飛沫の発生量と波浪や風等の自然条件の関係について検討した。さらに、強制砕波による飛沫の発生・輸送量の特性の変化についても検討し、海岸性状の変化にともなう飛沫への影響について比較・検討を行った。  今回の研究から明らかになった主な結論は次に示すとおりである。 (1)風速の増加により、飛沫の発生量は指数的に増加する。ただし、同一の風速条件下でも、入射波の条件によっても飛沫の発生量が25倍程度変化する場合があった。飛沫の発生量は入射波の波形勾配の2乗に比例して増加する傾向にある。また、砕波の形式がPlunging型(巻き波)のときに、他の砕波形式の場合とくらべて飛沫の発生量が大きくなる。 (2)強制砕波を行うことにより飛沫の発生量が大きくなる。これは強制砕波地点の前後で水深や海底勾配といった海底地形条件が急変するため、Plunging型の砕波が誘発されるからである。飛沫の発生量に与える海底性状の影響は、波浪変形および砕波形式への影響として考慮することにより入射波の影響と同様に扱うことができる。 (3)強制砕波を行った場合に発生する飛沫の陸上への伝搬率は、斜面床のみを設置した場合と比べて非常に小さい。このため、砕波帯内で2~10倍程度の値を示す飛沫量の差が、汀線上では2倍程度まで減少する。強制砕波を行うことによって砕波帯を沖側に移動させると、汀線から砕波帯までの距離の増大にともなって背後地まで伝搬される飛沫量が減少する傾向にある。このため、斜面床のみを設置した場合より砕波点の位置が1.5~2倍沖側に移動する場合には強制砕波を行った方が伝搬量が小さくなるケースもみられた。 (4)飛沫発生量の変化特性は、砕波時のエネルギー逸散率を用いて表すことができる。エネルギー逸散率とは砕波による乱れを入射波高、砕波水深および海底勾配の条件を使って表現するものである。したがって、このパラメターを用いることにより、飛沫の発生量に与える入射波および海底性状の影響を表すことができるといえる。
全文 /PDF/no0843.pdf