研究について

研究成果

護岸の吸い出しに関する水理模型実験

発行年月 港湾空港技術研究所 報告 035-02-01 1996年06月
執筆者 高橋重雄、鈴木高二朗、徳淵克正、岡村知光、下迫健一郎、善功企、山﨑浩之
所属 水工部 耐波研究室
要旨  ケーソン式の防波護岸に関する水理模型実験を行った。実験は、当所の大型造波水路で行い、防波護岸の大型模型を設置して波を作用させ、その変形を観察するとともに、間隙水圧を測定している。  実験では、現地の吸い出し災害の再現を試みるとともに、そのメカニズムの検討を行っている。また、二、三の吸い出し防止工法についても実験的にその有効性を検討した。実験では、通常の裏込石があるものだけでなく、裏込石がなく直接埋立土がある場合についても、測定を行っている。さらに、施工時に対応する、埋立土がない状況についても実験を行っている。得られた主要な結論は以下の通りである。 1)防砂シートに穴がある際には、波が作用するとマウンド透過波でシート付近の砂がゆるみ、その後の引き波で砂が吸い出され、空隙の大きい裏込石内に埋立砂が落下する様子が見られる。その結果、埋立砂内には空洞ができ、さらに空洞が大きくなると地盤の陥没になる。 2)ケーソン全面の波圧は容易にマウンドを透過して裏込石内に到達し、裏込石内には大きな圧力が発生する。マウンド透過波による裏込石内に発生する間隙水圧は以外に大きく、ケーソン全面波圧の70~80%にも及ぶ。さらに、越波によって護岸背後が冠水した場合には埋立砂の空隙水で満たされて裏込石内の密閉度が高くなり、ケーソン全面波圧とほとんど変わらない間隙水圧が裏込石内に発生する。  このようなマウンド透過並による強大な圧力を減衰させるため、裏込石を埋立地盤の天端まで延ばして解放すると、圧力を標準的断面の30%まで減衰でき、有効な圧抜き工法となる。 3)埋立土の土被りが小さく、埋立天端に比して静水面の位置が高い場合には、マウンド透過並による強大な揚圧力により埋立土が持ち上がられ、埋立砂がボイリング状体となって破壊する場合がある。 4)ケーソン間の目地にはケーソン前面から水塊が入り込み、目地板には大きな衝撃的な波圧が働く危険性がある。このはあ津は目地内の波面が空気を閉じこめ、これを衝撃的に圧縮して発生する物で、2ω。Hを越えることもある。しかし、この衝撃的なはあ津は減勢目地板を設けることによりかなり低減することができる。 5)裏込石が無く埋立砂が直接ケーソン背後に置かれる場合は、目地板が破損するとすぐ砂が吸い出されて危険である。また、越波や降水によって埋立砂の地下数位が容易に上がるためケーソンの安定性にも問題となる可能性がある。マウンド内の圧力は埋立砂によって密閉度が高くなるため、ケーソン前面の90%程度とかなり高くなる。
全文 /PDF/vol035-no02-01.pdf