研究について

研究成果

港湾構造物の円弧すべり解析における最適な安全率

発行年月 港湾空港技術研究所 報告 035-01-05 1996年03月
執筆者 土田孝、Tang YiXin
所属 土質部 土性研究室
要旨  軟弱地盤の多い沿岸域では、構造物の形状や地盤改良の範囲などが円孤すべり解析の安全率によって決まることが多い。本研究は地盤の不均一性を考慮した信頼性解析を行うことによって、初期建設費や破壊確率、破壊時のコストを計算し、期待総建設費を最小にするという観点から設計に用いるべき最適な安全率について検討したものである。主要な結論は以下のようにまとめられる。 a)港湾構造物などの円弧すべり解析の最適な安全率は、構造物の重要度、地盤の不均一性や定数の信頼度及び施工条件によって変わる。重力式岸壁及び矢板式岸壁の場合、最適な安全率Foptは経験的に次式で表される。Fopt=1.05+0.85(1+log10n)Vここにnは当初の建設費に対する破壊時の費用の比として定義される被害額率であり、n=0.5~10である。Vは地盤定数のばらつきで、V=0.1~0.2である。 b)被災額率や地盤定数のばらつきを考慮すると、設計に用いるべき安全率は構造物の重要度によって以下のように異なった値を用いるべきである。ただし、ここで重要度は被災額率、すあんわち破壊時のコストの大きさのことを意味しており、実際の構造物の被災額率の氷塊について経済的・社会的な影響なども含めて検討する必要がある。 ・地盤が均一で地盤定数の信頼度が高い場合  重要度の低い構造物(n<1)   1.15  一般の構造物(1<n<3)    1.20  重要な構造物(n>3)      1.25 ・地盤が不均一あるいは地盤定数の信頼度が低い場合  重要度の低い構造物(n<1)   1.20  一般の構造物(1<n<3)    1.25  重要な構造物(N>3)      1.30 c)防波堤における提体支持力に関する現行の技術基準の方法では、設計並による波圧が作用したときの支持力の安全率1.0の場合に50~60%の破壊確率が計算される。しかし、波圧時の荷重の特性や設計波高の出現確率を考慮して期待沈下量として評価するならば、最小安全率F=1.0、地盤定数の変動係数V=0.15、耐用年数50年としたときの支持力附則による沈下量は10cm(三角波形を仮定)~50cm(正弦波形を仮定)であり、現行の基準はほぼ妥当であるといえる。
全文 /PDF/DOC5190_1996030350105.pdf