研究について

研究成果

兵庫県南部地震による港湾施設の被害考察 (その9)神戸港ケーソン式岸壁の安定性に関する一考察

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 0813-09 1995年09月
執筆者 長尾毅、小泉哲也、木阪恒彦、寺内潔、細川浩二、門脇陽治、宇野健司
所属 設計基準部 設計基準研究室
要旨 1995年1月17日に発生した兵庫県南部地震は、神戸港の港湾施設に甚大な被害をもたらした。特に岸壁については重力式が非常に多く、ほとんどの施設が被災した。本研究では、神戸港のケーソン式岸壁のうち、位置・設計震度・置換砂層厚などに違いを持つ14施設を抽出し、地盤の地震応答計算から各施設の受けた最大の地震動を推定し、現行の港湾の設計法を用いて地盤の液状化を想定する場合としない場合のそれぞれについて地震時の安定性を評価した。その結果、ほとんどの施設で地震時の安全率は1.0を下回り、危険であると判定されたが、一部の施設では安全率が1.0を越える結果となり、堤体そのものの安定性からは被災の原因を説明できなかった。次に、地震時の安定性と被災量との相関を分析した結果、ケーソンの最大はらみ出し量と液状化を想定した場合の安全率との間に比較的強い相関性が認められた。また、一質点系の運動方程式からケーソンの滑動量を評価し、実変位と比較した。実変位よりも解析値が少ない傾向となり、ケーソンの変位には慣性力および背後地盤からの水平力のほかに、置換砂層のせん断抵抗力の減少などの影響が含まれていることが推定された。上下動については、水平動との位相差のため、影響は少ない結果となった。1994年三陸はるか沖地震についても一質点系モデル解析を行った結果、震度法よりも良い再現性を示した。このため、周期が非常に短い地震動については、静的な力の釣り合いを想定する震度法よりも、一質系滑動モデルなどの手法の方が適用性が高い場合があることがわかった。
全文 /PDF/no0813-09.pdf