研究について

研究成果

兵庫県南部地震による港湾施設の被害考察 (その5)液状化の判定に関する検討

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 0813-05 1995年09月
執筆者 山﨑浩之、善功企、佐渡篤史、舘下徹
所属 土質部 動土質研究室
要旨  神戸港の岸壁・護岸・防波堤の置換層、埋立部について9地点で今回の地震(兵庫県南部自身)での液状化に関する各種調査・解析を行った。本調査・解析から以下のような結論が得られた。 (1)神戸港で置換土、埋立土に用いられていたまさ土の粒度試験を行った。まさ土の粒度分布は、港湾の規準で示されている液状化する可能性の高い粒度範囲がはずれていた。 (2)標準貫入試験結果より得られたN値は20以下になるところが多かった。 (3)凍結サンプリングで乱さないまさ土を採取し、繰返し三軸試験を行った。繰返し三軸試験から、まさ土の液状化抵抗は繰返しせん断応力比で0.25弱で、通常の砂の液状化抵抗の範囲に入るものであることがわかった。一次元地震応答計算を行った。その結果、地表面で450gal程度の加速度が得られた。また、等価加速度は500gal近い値となった。 (4)粒度・N値法による液状化の予測・判定を置換層・埋立て部について行った。予測・判定結果は、調査を行った各地点のいずれにおいても液状化の可能性があるという結果になった。各地点の液状化の深度方向の範囲については地点により異なるが、ほぼ全層が液状化の可能性があるという予測・判定結果になったものがあった。 (5)繰返し三軸法による液状化の予測・判定を六甲アイランドとポートアイランドの2地点の岸壁・物揚場で行った。予測・判定結果は、いずれの地点においても液状化の可能性があるという結果になった。また、液状化の可能性のある層の深度方向の分布は、ほぼ全層が液状化の可能性があるという予測・判定結果になった。 (6)繰返し三軸法により求めた液状化抵抗率:FLは、六甲アイランドの岸壁で0.5程度、ポートアイランドの物揚場で0.2~0.5となり、かなり低い液状化抵抗率となった。このことから、今回の地震による両施設の液状化の程度(液状化による地盤変状等)はかなり大きいものであったと考えられる。 (7)六甲アイランドの内陸部の埋立地盤およびポートアイランドの一部では、噴砂等の液状化の痕跡が観察されていないと報告されている。これは、ここで行った液状化の予測・判定結果と異なっている。この原因は、内陸部で用いられた埋立土砂が岸壁施設付近で用いられた土砂と異なること、また、締固め等の地盤改良が行われていたことが原因として考えられる。 (8)液状化後の地盤変位に関する数値解析を行った。解析は繰返し三軸法による液状化の予測・判定から得られたFL値と繰返し三軸試験結果を用いて線形弾性有限要素解析で行った。解析結果は、ケーソン下端が3mせりだしケーソン背後の埋立部が3m沈下するという結果になった。解析には地震による弾性力が考慮されていないが、実際の変位量とほぼ対応した結果になった。このことから、今回の岸壁・護岸の大変位は液状化に起因しているところが大きいといえる。
全文 /PDF/no0813-05.pdf