研究について

研究成果

初期応力条件が矢板岸壁の地震時挙動に与える影響の有効応力解析による検討

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 0751 1993年06月
執筆者 亀岡知弘、井合進
所属 構造部 構造振動研究室
要旨  液状化対策工には種々のものがあるが、中でも最も有効性に優れているとされていて、施工実績も多いものに締め固め工法がある。この工法は、地盤の密度を増加させることを目的とすると同時に、水平方向の応力を増加させて液状化に抵抗する特徴を有する。しかし一方では、矢板岸壁において締め固め工法を用いた場合、施工時に発生する曲げ応力の増加による矢板の地震時耐力の低下が危惧される。  そこで、本研究では、有効応力の増加および矢板に生ずる曲げ応力の増加が矢板岸壁の耐震性に及ぼす影響について検討することとし、この観点から、初期応力条件が地震時における矢板の挙動に与える影響について、液状化を考慮した有効応力解析によって検討した。解析は、水深10mの矢板岸壁を対象とし、矢板背後の埋立地盤が緩詰めの場合と締め固め工の施工により密になった場合の2例について計算し、考察を行った。また、地盤内の水平応力の増加による影響については、矢板背後の埋立地盤の密度がゆるい場合と密の場合のそれぞれについて、地盤内の水平応力を段階的に変化させて検討を実施した。  これらの検討の結果、以下の結論が得られた。  1.締め固め工法による地盤内の応力増加は、控え工により変位が固定されているタイロッド付近において特に著しくなる傾向が見られる。  2.締め固め工法を矢板岸壁に施工した場合の矢板のはらみだし等にみられる初期土圧の増加は、矢板の地震時の安定性において危険因子とはならず、むしろ地震時の矢板の変位および曲げモーメントの抑制に寄与する ものと判断される。
全文 /PDF/no0751.pdf