研究について

研究成果

那覇港の水質とサンゴ礁保全に関する数値計算

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 0739 1992年09月
執筆者 細川恭史
所属 海洋水理部 海水浄化研究室
要旨  那覇港を例に選び、サンゴ礁の保全に関する水理的な面からの検討を実施した。サンゴ礁を含む海域について環境上からの特徴付けを試み、区分分けを試みた。水理現象に大きく左右される主要な環境因子としては、(1)流入濁りの拡散と粒子の沈積、(2)既存サンゴ礁からの放出幼生の漂流経路等が考えられた。  数値モデルにより、海水の流れ・海水交換・サンゴ幼生の漂流経路予測・懸濁態浮遊物質(SS)濃度および懸濁態浮遊物質沈積量の湾内分布を検討した。港内での海水の滞留日数についての計算は、港内にマーカーをいれ、一定時間潮汐流により漂流させた後、港内残留マーカー数を数えることによりサンゴの幼生が流れる方向を推定した。河川より流入するSS粒子の港内での拡散分布、および港内での堆積速度分布を予測した。降雨時の濁水については、流入負荷や懸濁粒子の粒径分布の実測値を参照した。  濁りに対する生息限界水質が設定されれば、シミュレーション結果と比較し、造礁サンゴ保全や移植の容易な水域範囲を知ることができる。石垣島での測定例を参考にすると、那覇港南部の河口周辺でやや不適の傾向が推察された。河川からの流入物質は港内に薄く広がるものの、周辺防波堤に遮られ、沖合いには開口部から出てゆくことが分かった。計算した流れ場の中では、放出された幼生は数km沖合いを岸沿いに南北に移動するようであった。沖合いの外礁は、元来生息サンゴの被度や活性が高いが、周辺の南北礁域との連結上も重要であることが推察された。
全文 /PDF/no0739.pdf