研究について

研究成果

曲面二重スリットケーソン堤の水理特性

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 0720 1991年12月
執筆者 高橋重雄、細山田得三、片山忠
所属 水工部 耐波研究室
要旨

 近年、防波堤はますます高波浪の沖合いに建設されることが多くなってきている。このため、波浪に対する安定性がより高いケーソンの開発が望まれている。さらに港湾空間の高度利用の観点から、消波機能の高い防波堤構造の開発も必要とされている。
 曲面スリットケーソンは、こうした高波浪の海域に適用できる直立消波ケーソンとして開発されたもので、船川港に建設されている。曲面スリットケーソンは優れたケーソンであるが、スリット部材に強大な波力が作用するため設計上問題となっていた。
 曲面二重スリットケーソン堤は、曲面スリットケーソン堤のスリット部の後部に遊水室を設け、耐波安定性と消波機能を改良したものである。第二港湾建設局横浜調査設計事務所では、小型断面実験を行いその構造の優位性を確認している。
 本研究では、さらに大縮尺での詳細な模型実験を実施し、それによる曲面二重スリットケーソン堤の持つ詳細な波圧特性、水理特性の把握、そしてその耐波設計法の確立を行っている。
 本研究で得られた主要な成果は以下のとおりである。
1)曲面二重スリットケーソン堤は、曲面スリットケーソン堤に比べて小さな半径の曲面スリット部材でも同程度の反射率が得られる。
2)曲面二重スリットケーソンの部材波力を考える上で考慮すべき2つの位相は、波面の衝突時と遊水室内部からの衝撃波力作用時である。これら2つの位相に対して設計波圧を与えた。この波圧分布は各部材の設計だけでなく、堤体全体の安定性の検討にも用いることができる。
3)曲面二重スリットの曲面部材に作用する遊水室内部からの衝撃波圧は、曲面スリットケーソンに比して1/2に低減され、堤体重量は10~15%低減される。

全文 /PDF/f8a7a113760af2fd98a319f9fe8615c53cd30ea9.pdf