研究について

研究成果

限界状態設計法における地震荷重の荷重係数の検討

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 0708 1991年06月
執筆者 白石悟、上田茂、上部達生
所属 構造部 海洋構造研究室
要旨

 昭和61年に改訂された土木学会の「コンクリート標準示方書」には、設計上必要な荷重係数、材料係数などの標準的な数値が提示されている。港湾構造物および海洋構造物にこれを適用するに当たっては、作用荷重および構造物の特性を考慮して、荷重係数、材料係数などの安全係数の値について十分に検討する必要がある。著者のうち白石・上田は地震荷重の荷重係数について、既に報告しているが、本資料では、地盤の加速度と水平震度の関係を見直し、改めて計算を行ったものである。
 北澤他は、日本の沿岸地域190地点について、1885年~1981年に日本国内で発生した地震のマグニチュードとその震源域からの距離とから、それぞれの地震に対し基盤の最大加速度を推定し、その上位20位までのデータを提示し、また、基盤の加速度の再現期待値を計算している。本資料では、この加速度データをもとに構造物の耐用年数中における地震荷重の最大値の平均値および変動係数を計算し、ついで、地震荷重に対する荷重係数を地点ごとに計算した。また、港湾の液状化の予測・判定手法に用いられている地位区分に従い、全国を5地域に区分し地域別の荷重係数を求めた。
 本資料で得られた結論は以下のとおりである。
1)A~Eの各地区における50年最大水平震度の平均値はそれぞれ0.172、0.145、0.124、、0.095、0.058である。また、その変動経緯数はそれぞれ、0.35、0.31、0.45、0.49、0.44である。
2)A~Eの各地区における構造物について、重要度係数を1.0として安全性指標を計算すると、それぞれ、0.85、0.95、0.65、0.06、0.67である。安全性指標は地域ごとに差異があるが、安全性指標が小さいほど構造物の破壊確率が大きい。構造物の設計は破壊確率がほぼ等しくなるように設計するのが合理的と考えられるので、安全性指標として各地区の数値の上限値をとり1.0として荷重係数を決めるのがよいと考えられる。
3)安全性指標を1.0として計算したA~E各地区の荷重係数は1.22、1.19、1.32、1.29である。したがって、限界状態設計法における地震荷重荷重係数はA、B地区では1.2、C、D、E地区では1.3とする。

全文 /PDF/no0708.pdf