研究について

研究成果

薄層要素法による二相系飽和地盤の動的応答に関する研究

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 0707 1991年06月
執筆者 風間基樹、野上仁昭
所属 構造部 構造振動研究室
要旨

 海洋構造物の基礎地盤が、陸上構造物のそれと最も異なる点は、囲りに海水が存在する点にある。海底に堆積した土は水で完全に飽和している。水で飽和した地盤は、土粒子間隙中の水によってしばしば、特有の現象を生じる。例えば、粘土地盤の圧密現象や砂地盤の液状化現象がその代表的な例である。これらの現象は、土粒子骨格自身の特性のみでは決まらず、水との相互作用が大きく関係する。飽和地盤中を伝播する弾性波の特性や動的地盤剛性を検討する場合も例外ではなく、土粒子と水の両者の動きを考慮する必要がある。
 本研究では、まず、Biotの式に基づく二相系の波動方程式に薄層要素法を適用し、間隙流体の排水うぃ考慮できる飽和地盤の薄層要素を開発した。定式化は、定常状態を考え、直交座標系および円筒座標系で行った。次に、この要素を用いて、地盤の排水条件や水深が波動伝播特性や地盤の動的剛性に与える効果を検討した。
 本研究の結論を要約すると、以下のとおりである。
(1)間隙流体の排水を考慮できる二相系飽和地盤の薄層要素を開発した。
(2)開発した飽和地盤の薄層要素を用いて、飽和地盤の波動伝播特性および動的地盤剛性を検討し、以下の結論を得た。
1.飽和地盤を非排水状態と考えたとき、動的地盤剛性は、間隙流体の体積剛性があるため、感想地盤のそれよりも大きい。非排水条件を仮定することは、乾燥地盤のポアソン比を見かけ上大きくすることと等価である。
2.飽和地盤に排水を許す場合、荷重の載荷速度が地盤の透水係数よりも十分小さいならば、波動伝播特性や地盤の動的剛性は、乾燥地盤のそれに近くなる。極端な場合、荷重が静的に載荷されるならば、乾燥地盤と飽和地盤の差はない。
3.逆に、荷重の載荷速度が地盤の透水係数に比較して大きくなるほど、その挙動は非排水条件に近づく。
4.波動伝播特性や地盤の動的剛性は水深の影響を受ける。

全文 /PDF/no0707.pdf