研究について

研究成果

人工海草による底質移動の制御効果に関する模型実験

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 0692 1990年12月
執筆者 菅原一晃、入江功
所属 海洋水理部 海象調査研究室
要旨

 港湾の外郭施設や海岸構造物は、強大な波浪等の外力から港湾、海岸・海浜を防護するために、コンクリートを主体とする構造物によって建設され、その使命を果たしている。近年ではこれらの構造物も単体で立ちはだかるのではなく、面的な施設の一部としての位置付けで見直されつつある。防波堤や離岸堤を低天端化し、護岸構造物は人々が水辺に親しめるように緩傾斜のものが取り入れられるようになり、さらにこれらの構造物自体にも多様な付加価値が要求される時代となった。これらのことは、自然性を基調とした景観と海辺の親近感を追及することにほかならない。
 そこで、筆者らはこれらの要請を解決する一方法として、鋼構造物の基礎洗掘の防止と海浜の侵食対策を図るために、柔軟な材料を用いることに取り組むことにし、人工海草がこれらの目的に対してどのような効果があるかを検討した。
 二次元造波水路を使用して、実験に用いる葉状体素材の選定のための波による葉状体の挙動観察、人工海草の底質抑止効果の検討、人工海草がある場の波の岸沖流速による漂砂効果の検討、および人工海草がある場の浮遊砂の岸沖移動特性の4つの実験を行った。
これらの実験によって、人工海草が上記目的に対して有効な工法となる可能性があることを確認した。
 主要な結論は以下の通りである。
(1)人工海草は、基本的には移動限界波高を大きくし、底質の移動を弱める働きがある。
(2)人工海草の波による底質移動に対する機能として、岸向き(波の進行方向)漂砂効果と堆積効果が顕著であり、侵食効果と沖向き漂砂効果はほとんど持たない。
(3)人工海草はある程度の植生密度があれば底質を岸側に移送させる機能を持ち、あるいは人工海草植生区域の周辺に堆積させる効果が強くなる。また、岸沖の植生区域長を長くすれば、入射波高の低減効果が期待できる。

全文 /PDF/no0692.pdf