研究について

研究成果

短フェッチ海域の波浪推算モデル

発行年月 港湾空港技術研究所 報告 029-03-01 1990年09月
執筆者 後藤智明、末次広児、永井紀彦
所属 水工部 海洋エネルギー利用研究室
要旨  大阪湾における気象・海象観測資料を用いた海上風の抵抗則と風波の発達則に関する種々の検討を通し、短フェッチ海域の風波を対象とした一地点出力型パラメータ波浪推算モデルを提案した。また、実測値および従来の有義波法、スペクトル法による波浪推算結果と比較することにより推算特性に関して検討した。  提案したパラメータ波浪推算モデルは、無次元エネルギーと無次元フェッチの1乗則および無次元高と無次元周期の3/2乗則という2つの経験則で風波の発達特性が記述できると言う仮定に基づき定式化されたものである。そこで、経験則を構成する無次元特性量のなかで最も重要と考えられる代表風速に焦点をあて種々の考察を行うとともに経験則そのものの精度を波浪推算結果と実測結果の比較から検討した。  得られた主要な結論は、以下のとおりである。  風速15m/s程度以下の気象擾乱による風波に関しては、無次元エネルギーと無次元フェッチの1乗則および無地元波高と無次元周期の3/2乗則がともに代表風速によらず精度よく成立する。風速20m/s程度以上に関しては、本報告で提案する抵抗則を用いた摩擦速度を用いる必要がある。従来、短フェッチ海域の波浪推算に利用されてきた有義波向およびSMB法は、風速20m/s程度以上の気象擾乱に関して推算精度が悪くなる。また、スペクトル法による波浪推算値は、短フェッチ海域の出現周波数スペクトルがスペクトル法で仮定しているものと大きく特性が異なるため、風速値よらず推算精度が著しく劣る。高風速の擾乱に対しては、ここで提案したパラメータ波浪推算モデルを用いる必要がある。
全文 /PDF/vol029-no03-01.pdf