研究について

研究成果

撹拌槽での水表面からの酸素溶解実験

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 0657 1989年06月
執筆者 細川恭史、関根好幸、古川恵太、堀江毅
所属 水工部 沿岸防災研究室
要旨

 直径35cmのホーローびき水槽を用い、表面付近に種々の撹乱を起こすことにより水表面からの酸素の溶解速度を測定した。撹乱は、回転子を底部で回転させて作り出した他、振とう子をゆっくり上下振とうさせて作り出すケースも実施した。水面下0.5cmの深さで、ホットフィルム流速計を用いて乱れを測定した。必要に応じて流れや乱れの水平分布・鉛直分布を測定した。薬品を用いて脱酸素し、その後撹乱を与えて水表面からの酸素溶解を促進させた。溶存酸素計を用い濃度の回復をモニターし、再曝気係数を算定した。
 得られた再曝気係数は、0.1×10-4~4×10-4(1/s)と広い範囲にわたっている。計測された表層での水理量と再曝気係数とを比較したところ、平均主流流速、乱れ強さ、乱れによるエネルギー逸散率と再曝気係数とが関係を有していることがわかった。種々の異なる撹乱に対し、乱れ強さと再曝気係数とは両対数グラフ上の1つの直線のまわりに分布することが示された。指数回帰分析によれば、再曝気係数は表層乱れ強さの0.9~1.0乗に比例しており、ややばらつくものの表層エネルギー逸散率の0.39乗に比例することがわかった。また、流れと共存した時には、振とう撹乱は単独の時よりも大きな曝気効果があることがわかった。
 河川での再曝気係数は、流速分布に対するエネルギー的な考察から断面平均流速・河床勾配・有効水深等の関数として検討されてきている。水深が深く往復流の効果も大きな海域では、同じ扱いはむずかしく、曝気現象の生じている水表面付近の水理量との結びつきを考える必要がある。再曝気は、1秒程度以下の乱れに関連し、水表面に流れと流れとを与える現象(砕波、風波の発達)下で大きくなる事が示唆された。実用的な再曝気係数の予測式を得るためにめ、二次元水路実験等の積重ねが必要である。

全文 /PDF/no0657.pdf