研究について

研究成果

根入れ鋼板セル護岸の地震観測

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 0648 1989年06月
執筆者 野田節男、倉田栄一、飯田毅、武藤裕之、吉田洋二郎、荻野秀雄
所属 構造部 構造部長
要旨

 著者らは、根入れ鋼板セル式構造物に対する耐震設計法として、支持地盤をバネに置換しセルを剛体とみなす設計法を主として模型振動実験に基づき提案した。本研究の目的は、和歌山港に建設された実在の根入れ鋼板セル護岸において、1984年より実施してきた地震観測結果より当該構造物の地震時挙動を明らかにし、提案設計法の妥当性を検証することにある。
 観測対象のセルの諸元は、直径19.5m、高さ20m、根入れ深さ6mである。計測項目は、(1)地盤、中詰、セル天端の加速度、(2)根入れ部前壁土圧、底面反力、根入れ部後壁土圧である。
 約4年間の観測において、基盤の最大化速度は33Galながらも、52の地震記録を得ることができた。
 得られた成果は以下のとおりである。
1)実在の鋼板セル護岸の地震時挙動では、固有振動数約2Hzの1次モードのロッキング振動が卓越している。
2)地震時の前壁土圧および底面反力の分布はセルのロッキング振動に基づく分布形を示しており、既往の模型振動実験結果とも対応している。
3)有限要素法(FLUSH)による応答計算結果は観測波形と比較的良い一致を示しており、当該構造物の地震時挙動を、ある程度推定しうる。
4)観測結果との比較により、支持地盤をバネに置換する提案設計法は、合理的で実用に供し得るものと判断される。

全文 /PDF/no0648.pdf