研究について

研究成果

ヨツバネスピオの貧酸素耐性と内湾海底における夏期無生物域の発生条件

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 0643 1989年03月
執筆者 細川恭史、堀江毅
所属 水工部 沿岸防災研究室
要旨

 富栄養化した内湾湾奥では、夏期の成層の発達とともに、しばしば底層水の貧酸素化が見られる。酸素の欠乏により、海底面上の生息動物が死滅し、無生物域となる事がある。劣悪な条件下で卓越して生息する底生動物ヨツバネスピオ(A型)(Paraprionospio sp. A tyep)を選び、これの貧酸素に対する生理応答を調べた。
 ヨツバネスピオは、酸素濃度が3mg/lを下まわると、呼吸速度を低下させ活性を落とす。しかし、1mg/l以下の低酸素条件でも即死はせず、1日間から数日間は生き延びることがわかった。また、ヨツバネスピオの餌の摂食活動の酸素濃度依在性は明確には把握できなかった。酸素が豊富な20℃の条件では、有機物の摂食・代謝を通じ、湿重量1gあたり毎時0.04~0.1mgのCODを分解・除去しているが、死滅すると湿重量1gあたり約3gのCOD負荷となる事がわかった。
 ヨツバネスピオの夏期の死滅は、単に酸素欠乏による窒息死よりも同時に底泥中から生成される嫌気性毒物による影響が大きい可能性がある。

全文 /PDF/no0643.pdf