研究について

研究成果

リモートセンシング手法の水質調査への適用

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 0626 1988年06月
執筆者 村上和男、菅沼史典、佐藤英治、宮原祐二
所属 海洋水理部 海水汚染水理研究室
要旨

 内湾・港湾域など、空間的に複雑な水質構造を持つ水域を対象とし、面的な水質情報を敏速に取得できる水質観測手法として可視赤外帯域のリモートセンシングの適用性を検討した。
 東京湾湾口周辺海域を対象とし、船舶による水質調査と、地球観測衛星LANDSAT、ならびにリモートセンサを搭載した航空機による同期観測を実施した。航空機による低空観測では、大気中でのパスラディアンスによる撹乱の効果を軽減することができるとともに、比較的限られた区域の詳細な調査が可能である。
 リモートセンシングで取得したデータとシートルース水質項目とに相関分析・主成分分析を適用し、相互の関連性を検討した。その結果、表層の濁度、水温についてはリモートセンシングデータとの高い相関が見出され、人工衛星・航空機それぞれについて相関分析結果をもとに水質分布の推定を行った。
 さらに、赤潮の原因となる植物プランクトン量の把握を目的として、クロロフィル-aの検出を試みた。クロロフィル-aは濃度による分光反射特性の変化が顕著で、リモートセンシングで検出可能と考えられるが、本検討の範囲では分光輝度特性からクロロフィル-aの存在をとらえることができなかった。しかし、可視帯域データから得られた分光輝度特性は現場の海色(色名)と比較的良い対応を示すことがわかった。
 統計解析の結果から水質項目に対して、人工衛星と航空機のデータはほぼ同様の傾向を示し、人工衛星高度からの内湾・港湾域水質調査が十分可能であることがわかった。人工衛星の定期的な利用をはかることで、広域的な水質調査を継続的に実施することが可能となる。

全文 /PDF/no0626.pdf