研究について

研究成果

コンクリートはり部材の水中における力学的特性に関する実験的研究

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 0559 1986年09月
執筆者 大即信明、大越康史、横井聰之
所属 構造部 材料施工研究室
要旨

コンクリートはり部材の水中における力学的特性が気中のものと異なるこてゃ定性的には知られていたが、設計に反映されることはなかった。これは、種々の安全率により安z年であるという工学的判断があったためと思う。しかしながら、十分な裏づけはないものと思う。したがって、この問題についての検討は必要である。
 さらに、最近のすう勢として、コンクリート構造物の設計法は、限界状態設計法に移行しつつあり、港湾構造物においても同設計法の採用が検討されている。限界状態設計法においては、一般に、終局限界状態、使用限界状態および疲労限界状態に対して、構造物の安全性および使用性の検討を行うことが要求される。そのため、コンクリート部材のより詳細な力学的特性に関する知識が必要となる。なお、通常の状態(気中)におけるコンクリート部材の力学的特性に関しては、従来より他機関で研究が行われており、知見が得られており、これをもとにコンクリートの設計法が築かれている。
 本研究では、コンクリートはり部材の水中における力学的特性の把握を目的とし、水中および気中において、代表的なコンクリート部材であるはり部材(鉄筋コンクリート製およびプレストレストコンクリート製)について載荷試験(静的および疲労試験)を実施した。実験結果をもとに、水中と気中におけるコンクリートはり部材の力学的特性(コンクリートの強度、部材の耐力、たわみ、ひびわれ、疲労強度等)の相違を明らかにすることによってコンクリートはり部材の水中における力学的特性を把握することとした。
 本研究により得られた主要な結論は、以下のとおりである。
(1)鉄筋コンクリートおよびプレストレストコンクリートはり部材の静的耐力は、試験の環境の相違(水中および気中)によっては顕著な影響は受けなかった(重ね継手のない場合)。
(2)繰り返し荷重下ではその影響が現れ、水中での疲労強度は、気中でのそれに比べて、10~20%の低下がみられた。
(3)鉄筋の重ね継手を有するはりでは、水中での静的耐力および疲労強度は、気中に比べて約25%低い値となった。
 また、これらの結果は、設計に反映できると判断した。

全文 /PDF/no0559.pdf