研究について

研究成果

円筒型カプセルの抗力係数および傾斜管内流動特性

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 0555 1986年06月
執筆者 浜田賢二、岡山義邦、筌場和宏、中村裕二
所属 機材部 主任研究官
要旨

カプセル輸送は、パイプラインによる固体の輸送法の一つであり、環境保全、省エネルギ等の観点から今後種々の応用が期待されている。港湾分野でも、埋立土砂の採取地から埋立地までの直接輸送、人工島と陸上ターミナル間での各種物資の輸送、増大する廃棄物の埋立地や大水深処理場への直接輸送等への応用が考えられる。この分野ではさらに、被輸送物の前後処理が容易なことや、コンテナ輸送と同様にカプセルによる被輸送物の規格化等の品質管理やハンドリング面での利点、あるいは陸海接点での積換え設備の省略といった流通機構の簡素化も期待できよう。  カプセル輸送は空気式と水力式に大分されるが、大量の用水の確保が容易なことや、パイプライン内外の圧力差に対する配慮が少ないことなどから、水力式が有利と考えられる。しかしながら水力式は、その歴史が比較的新しいこと、取扱いが面倒なこと、またカプセル周囲流れの解析が困難なことなどから、実用化に際してのデータの蓄積は十分とはいえない状況である。  以上のような背景から、水力式カプセル輸送の基礎的研究として、パイプライン(内径100mm)中での円筒型カプセルの抗力直接測定実験、カプセル初動に必要な流体の流速、いわゆる初動流速の測定、さらに水平流れ、上昇流れ、下降流れにおけるカプセル流送実験を行い、寸法、比重の異なる各種単カプセルの流動特性を調べた。結果を要約すると以下のとおりである。  パイプライン中でのカプセルの抗力係数は、カプセルとパイプの直径比の増大に伴って急激に増大し、かつカプセルの偏心量の影響が小さくなる。またこの抗力係数は、カプセル初動時にはカプセルと管壁との静止摩擦係数と対応づけられる。  カプセル加速特性のうち、カプセル平均加速度は、流体流速の増加に伴って指数関数的に増大するが、総じて加速時間は比較的短い。しかしながら、カプセル流送区間の圧力損失、すなわち差圧は、流送条件によって流体過渡現象として理解される振動状態を明確に示し、この減衰にはカプセル加速終了後も相当の時間を要する。  カプセル定常走行状態においては、カプセル速度はカプセルの抗力係数とカプセル、管壁間の動摩擦によって決定されるが、流体流速の増加に伴って、カプセルに作用する揚力の増加等によってカプセル速度は流体流速に近づき、場合によっては流体平均流速を上回ることもある。  輸送動力を算定するためのカプセルによる圧力損失と流送条件の関係は、周囲流れの差異、上記揚力効果等の影響により変動が比較的大きいが、各カプセルごとにはかなりの相関関係が見られる。

全文 /PDF/no0555.pdf