研究について

研究成果

沖浜帯における波による砂移動について

発行年月 港湾空港技術研究所 報告 001-01-02 1963年02月
執筆者 佐藤昭二、田中則男
所属 水工部 漂砂研究室
要旨

 一般に砂浜海岸においては、沿岸砂洲の沖側、すなわち沖浜帯の海底勾配は1/100程度以下で砂の移動を論ずるとき、この部分は水平床とみなしても大差はない。このために、Manohar、Vicent、Goddet、など多くの人々が水平床で実験を行ない、沖浜帯における砂
移動の特性のいくつかを明らかにして来た。しかし、底質の移動の機構は複雑なために、なお未解決の問題も多くある。したがって、著者らも、この未解決な問題を多少なりとも明らかにするために2次元水路を用いて水平床における実験を行なった。
 一般に、波の水底に作用する力がある値以下の場合は、底質は静止したままであるが、この値が増加するにつれて継ぎのような限界をとおって砂は移動する。
 1)水底の表面に比較的突出した粒子がいくつか動き出す。これはManoharはinitial movementと名づけた。
 2)水底の表面の第一層の砂がほとんど動き出す。これをManoharはgeneral movementと名づけた。
 3)rippleの形成
 4)rippleの消失
 Manoharは、これらの各限界についての実験式を示した。石原・椹木両博士は、層流境界層における砂移動について、明確な理論的考察と非定常流の実験を行い、第一限界におけるManoharの実験値を参照して移動限界推進を示す式を示した。一方、Goddetは、10分後には弱いリツジが形成されるような弱い移動が砂表面に現れたときを初期移動限界として、そのような限界を示す実験式を求めた。著者らの実験では、砂の粒径が2~1mmのときには、第2と第3の限界は区別できたが、0.71~0.35mmと、0.25~0.125mmのときは、ほとんど区別することができなかった。しがたって、著者は、Manoharと著者らのgeneral movementの実験結果からgoddetの実験値を参照して第2の限界を示す全面移動限界として求めた。次に、rippleが形成されて、砂の移動が顕著になるがこのときの砂の移動方向は、Manoharの実験では、常にrippleの移動方向と同じで岸向きであったが、著者らの実験ではrippleの移動方向は常に岸向きであり、砂の移動方向は岸向きと置き向きの場合があった。このような移動方向の変化の限界を示す式を実験から求めた。しかし、移動量については、明確な量的考察をすることはできなかった。
 最後に、rippleの一つを着色砂およびアイソトープ砂で置き換えて、rippleの移動と砂粒子の移動機構について実験的考察をした。

全文 /PDF/vol001-no01-02.pdf