研究について

研究成果

パラペット後退型護岸に働く波圧に関する検討

発行年月 港湾空港技術研究所 報告 60-1-5 2021年06月
執筆者 鈴木 高二朗・久保田 博貴・鶴田 修己
所属 沿岸水工研究領域 耐波研究グループ
要旨

 令和元年房総半島台風(台風15号)は最低中心気圧955hPaと非常に強い勢力を保って関東地方に接近し、9月9日に三浦半島上陸後、東京湾を縦断した。本台風により、横浜市中央区の本牧ふ頭、金沢区の福浦地区と幸浦地区で護岸が倒壊し、越波による浸水被害が発生した。
 被災護岸はケーソンに対してパラペットが陸側に設置された、いわゆるパラペット後退型護岸だった。パラペット後退型護岸は越波量を抑制する効果が確認されているものの、パラペットの後退量が小さい場合には大きな波力がパラペットに作用することが指摘されていた(合田・岸良、1976;高橋ら、1992)。被災した護岸でも大きな波力が作用した可能性がある。そこで本研究では、福浦地区の護岸を対象として台風襲来時を想定した大規模水理模型実験と数値シミュレーションを実施し、令和元年房総半島台風による福浦地区の護岸に作用した波力と越波量について検討するとともに、パラペット後退型護岸におけるパラペットの後退量や水深と波力及び越波量の関係性を明らかにすることとした。その結果、以下のことが明らかとなった。  
 1)後退パラペットに働く波力は1.5~2.5ρgH、最大値で3~4ρgHであり、 後退パラペットでの越波の衝突状況、波圧の発生状況は高橋ら(1992)と同様の結果であった。
 2)数値計算(CADMAS-SURF/2D)による計算結果は、ばらつきがあるものの実験とほぼ合致していた。
 3)水位が水叩きの天端に近い場合や、より水位が高い場合には高橋ら(1992)よりも波圧が大きくなる傾向があり、高橋らの式を1.9倍する修正係数を提案した。
 4)後退距離が大きくなると波力が徐々に低減することが明らかとなった。

キーワード:後退パラペット、衝撃波圧、越波、令和元年房総半島台風、大規模実験

全文 REPORT60-1-5(PDF/4,216KB)