材料研究グループ

防食工法の概要

Materials Group

本研究では、様々な防食工法の試験を実施しています。ここでは、各工法を簡単に紹介いたします。

有機ライニング

ポリエチレンライニング、水中硬化型ライニングなどに代表されるように有機系材料により鋼材表面を被覆する防食工法で、塗装と比べ、一般に膜厚が2~10mmと厚く施工されます。
ポリエチレンライニング(写真2)の構成を図1に示します。本工法は、耐久性、耐海水性および耐候性に優れた防食工法で、新設構造物に適用されます。
水中硬化型ライニング(写真1)は、水中硬化型塗料を鋼材表面に塗布し、厚膜に形成させたもので、新設・既設構造物を問わず施工が可能なため、補修工法としても有効な防食工法です。

水中硬化型ライニングの画像

写真1 水中硬化型ライニング
(パテ状の塗料を塗布している様子)

ポリエチレンライニングの画像

写真2 ポリエチレンライニング
(黒い部分がポリエチレン)

ポリエチレンライニングの構成の画像

図1 ポリエチレンライニングの構成

無機ライニング

無機ライニングにはモルタルライニング、金属ライニングおよび電着工法等があります。
モルタルライニングは、鋼材表面をセメントモルタルやコンクリートで被覆する工法で、モルタルやコンクリートを衝撃等から保護するために保護カバーを取り付けた工法や、補強を考慮した水中スタッド溶接と鉄筋コンクリートによる防食・補強工法〔CRUS工法〕(写真4)があります。
金属ライニングは鋼材表面を耐食性金属で被覆する工法で、代表的なものにはチタン〔チタンクラッド鋼〕やステンレス鋼による防食工法があります。この工法は他の工法に比べて機械的強度が大きく、耐衝撃性、耐磨耗性に優れており、また金属光沢が保持できるので景観の面からも用途が広がっています(写真3)。
電着工法(写真5)は鋼材に直流電流を流すことにより鋼材表面に生成される厚い石灰質層を被覆防食として利用する防食方法であり、コンクリートのひびわれの補修やコンクリート表面の改質にも適用されている技術です。

写真3 紋別港の氷海展望塔 (干満部にチタンクラッド鋼を適用)の画像

写真3 紋別港の氷海展望塔
(干満部にチタンクラッド鋼を適用)

CRUS工法(無機ライニング/補強) の画像

写真4 CRUS工法(無機ライニング/補強)
(水中スタッド溶接と鉄筋コンクリートで一体化)

電着工法の画像

写真5 電着工法
(表面は白色の石灰質(カルシウム)層により被覆)

ペトロラタムライニング

ペトロラタムライニングは、ペトロラタム(石油系のワックスの一種)を主成分とするペトロラタム系防食材料により鋼材を被覆する防食法です。被覆した防食材を波浪や漂流物の衝突などの外力から守るとともに、腐食環境から遮断して耐久性を向上させるため保護カバーを設置します。(図2参照)
一般に保護カバーには、FRPやPEなどの強化プラスチックが用いられますが、近年ではさらに耐久性を向上させるため、チタンやステンレス鋼などの高耐食性金属を保護カバーに用いる工法もあります。
この工法は、水中施工が可能なため新設・既設構造物を問わず適用でき、下地処理が比較的簡単で施工後の養生を特に必要としないという特徴を有しています。

ペトロラタムライニングの模式図の画像

図2 ペトロラタムライニングの模式図

ペトロラタムライニングの画像

写真6 ペトロラタムライニング
(保護カバーにFRPを用いた例)

ペトロラタムライニング の画像

写真7 ペトロラタムライニング
(保護カバーにチタンを用いた例)

塗装

塗装は、港湾構造物へ多く適用されていますが、実際に使用される環境は非常に厳しい場所であるため、陸上構造物の塗装に比べ厚膜による塗装が行なわれています。
代表的な塗装系として、ジンクリッチプライマー+ガラスフレーク入り塗料やエポキシ樹脂塗料、および美粧性を付与するために高耐候性塗料(ふっ素樹脂塗料、ポリウレタン樹脂塗料、シリコン樹脂塗料など)を組み合わせたものがあります。

電気防食

電気防食は、主に海水中・海底土中部に適用され、外部から鋼材表面へ直流電流を流すことにより、鋼材の腐食を防ぐ工法です。
電気防食には、外部電源方式と犠牲陽極を用いた流電陽極方式があります。維持管理が容易なことから、現在わが国ではほとんどがアルミニウム合金陽極による流電陽極方式が採用されています。
特に、港湾構造物に適用される電気防食は、海水中・海底土中部において防食効果が高く、経済性にも優れています。対象施設は、新設・既設構造物を問わず防食できる利点があり、さらに防食システムの寿命を選択できるなど総合的に優れた信頼性の高い防食工法です。

写真8 電気防食施工状況 (アルミ合金陽極取付状況)の画像

写真8 電気防食施工状況
(アルミ合金陽極取付状況)