研究について

研究成果

電気浸透を用いた浚渫土砂減容化手法に関する研究 -粘性土の電気浸透圧密効果に関する電気化学的考察-

発行年月 港湾空港技術研究所 報告 63-1-5 2024年03月
執筆者 杉山 友理、橋本 永手、Couture Cyrille、高野 大樹
所属 地盤研究領域 土質研究グループ
要旨

 電気浸透圧密手法が浚渫土砂の減容化手法として非常に有効であることが分かっている.ここで,電気浸透圧密とは,粘性土中に電流を流すことで陽極から陰極に間隙水を強制脱水させる手法である. しかし,地盤材料や使用する電極材料により電気浸透効果が全く異なるため,電気浸透圧密工法として現場適用時の仕様が決まらず,現場適用事例は非常に少ない.このような状況を鑑みると,粘性土に対する電気浸透現象を電気化学的な視点で整理する必要がある.電気浸透効果に影響する電気化学 的な要因として,粘性土/電極界面の電圧降下,粘性土内の電流キャリア,電圧印可による粘性土内のイオン組成変化の3つが挙げられる.粘性土に電気浸透を適用するためには,これらの要因を適切に評価することが重要である.本研究では,3つの異なる実験系を構築し,それぞれの結果から電気浸透圧密に対する電気化学的な整理を試みた.その結果,分極試験により粘土材料と電極材料の組合せにより粘性土/電極界面の電圧降下が異なることを示した.また,電気浸透要素試験の結果から,大きな電流 電圧値を印加しても電気浸透脱水効果は大きくならないことを明らかにした.このとき,電気浸透を起こす最適 な電流電圧値は粘性土の組成に依存することがわかった.電気浸透圧密後の供試体を用いたEPMA分析では,粘土にナトリウムなどの酸化性イオンが多く含まれる場合,電気泳動や地盤内で起こる化学反応に影響を与えるため,電流を最適な印可方法が粘土によって異なる可能性を示した.さらに,本研究では,実験室規模 の電気浸透脱水試験を原位置に近い配置で行うことで,粘性土の脱水,圧密および表面クラックの発生の関 係について検討した.

キーワード:粘性土,減容化,電気浸透,圧密,模型実験

全文 REPORT63-1-5本文(PDF/17,696KB)
REPORT63-1表紙・奥付(PDF/580KB)