研究について

研究成果

Quick measurement of soil temperature by means of IR thermometer(赤外線温度計を用いた地中温度計測)

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1412 2023年12月
執筆者 杉山 友理、渡部 要一、森川 嘉之
所属 地盤研究領域 土質研究グループ
要旨

 干潟を対象とした水辺の土質力学において,地下水位より上にサクションが発生する深度における地中温度分布は,土質力学において最も重要なパラメータの一つである.また,寒冷地におけるセメント処理土の養生温度管理においても,地中温度の把握は重要である.この場合,広域の地中温度を計測する必要があり,効率的な測定方法が求められる.また,近年では微生物固化などの新しい手法について研究が進められており,地盤中の温度管理がより重要になる可能性が高い.現在,様々なタイプの温度計が販売されており,その多くが地中温度測定に利用可能である.本研究では,センサーの破損の問題を回避し,熱平衡に達するまでの時間を短縮できる方法を開発し,迅速な地中温度測定への適用性について検討した.具体的には,従来の接触型温度計の代わりに,近年開発された非接触型温度計である赤外線(IR)温度計を用いた地中温度の迅速測定方法について検討した.  
 ポリ塩化ビニルでできたスペーサー付きのケーシングパイプを地表から目標深さまで貫入し,スペーサーを取り外した後,ケーシングパイプにIR温度計をセットして地中温度を約5秒で素早く測定したところ,安定して温度測定をすることができた.自記録式サーミスタ温度計による測定温度との比較から,高い精度でIR温度計による測定が可能であることを確認した.測定対象深度からの距離が長く,ケーシングパイプ上部に設置する狭視野タイプのIR温度計と,測定対象深度からの距離が短く,ケーシングパイプ内部に設置する広視野タイプのIR温度計のいずれの測定方法でも十分な精度で地中温度を測定することができた.しかし,特に低温域においては,実測温度と表示温度との直線性が損なわれることがあるため, IR温度計の測定可能温度範囲に注意し,必要に応じてキャリブレーションを実施する必要がある.本研究で確認されたように,IR温度計は効率的・迅速かつ高精度に地中温度を計測できるため,寒冷地における冬季のセメント処理土の打設など,温度管理が必要な施工管理にも適用できるといえる.

キーワード:地中温度,温度計,赤外線
Key Words: Soil temperature, thermometer, infrared

全文 TECHNICAL NOTE1412(PDF/2,149KB)