研究について

研究成果

矢板式係船岸の偶発状態に対する耐震性能照査法の高度化に関する課題の整理

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1410 2023年09月
執筆者 稲田 滉平、水谷 崇亮、野津 厚、小濱 英司、大矢 陽介、川端 雄一郎、竹信 正寛、近藤 明彦、田中 豊、松村 聡、田渡 竜乃介
所属 地盤研究領域 基礎工研究グループ
要旨

 港湾空港技術研究所では,国土技術政策総合研究所および一般社団法人鋼管杭・鋼矢板技術協会と合同で,矢板式係船岸の耐震設計法に関する研究の現状把握,平成30年度に改訂された現行の港湾の施設の技術上の基準に関する課題の抽出および今後の方針設定を目的とした勉強会を令和4年度から令和5年度にかけて開催した.本資料は,当該勉強会での議論の内容を取りまとめ,設計法の高精細化に向けた研究の視点を整理したものである.

 抽出された主な課題として,1)耐震強化施設ではない岸壁(通常岸壁)のレベル2地震動に対する要求性能が設定されていない,2)耐震強化施設である岸壁の使用性および修復性に対応する性能規定は,実際の使用可否または修復可否に即していない,3)FLIP等の数値解析においてバイリニア型で表現している鋼管矢板のM-φ関係では限界曲率超過に伴う耐力低下が表現できない,といった内容が挙げられた.また,これらに対する主な解決方針として,通常岸壁のレベル2地震動に対する要求性能を安全性とすること,耐震強化施設については,レベル2地震時照査に続いて被災後の緊急物資輸送または幹線貨物輸送を想定した照査による判定を行うことなどが提案され,合わせて上記の要求性能に対応した性能照査法に関する具体的な研究課題が整理された.

 本勉強会で挙げられた検討方針については,港湾空港技術研究所および国土技術政策総合研究所において検討が継続される予定である.また今後は,矢板式岸壁における課題および解決方針を軸に,他の構造形式についても議論を重ねることにより,さらに高精度かつ効率的な設計法へと改善できるよう取り組みを進めていく.


キーワード:岸壁,矢板式係船岸,耐震性能照査法,レベル2地震動,要求性能

全文 TECHNICAL NOTE1410(PDF/992KB)