研究について

研究成果

長期的な微小繰返し荷重作用時の杭の水平抵抗特性に関する大型模型実験と要素試験

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 No1408 2023年06月
執筆者 中村 圭太,松村 聡,水谷 崇亮
所属 地盤研究領域 基礎工研究グループ
要旨

 洋上風力発電施設は長期間にわたって繰返し荷重を受けるため,繰返し作用を受けた地盤の累積ひ ずみや剛性変化は,構造物の安定性や固有振動数の観点から留意が必要である.既往の研究やAPI で は,比較的大きな繰返し荷重に対する杭の水平抵抗特性変化に着目している.しかし,洋上風力発電 施設は供用期間が通常20 年以上を想定していることから,106–107 回の極めて多い繰返し荷重が作用 する.そのため,常時波浪等による微小な繰返し荷重であっても,杭基礎周辺の地盤力学特性の変化 が懸念されている.
  このような背景から,本研究では微小な繰返し水平荷重に伴う杭周辺の水平方向の地盤反力特性変 化を検証することを目的として,模型実験・要素試験を実施した.模型実験では,長さ3000 mm,外 径150 mm,肉厚2 mm の模型杭を砂地盤内に貫入させ,その後繰返し水平載荷実験を実施した.ま た,近年は杭の大口径化が顕著であることから,杭径による水平抵抗特性の違いについて検証するた めに,杭径が2 倍となる長さ3000 mm,外径300 mm,肉厚4 mm の模型杭についても同様に実験を 実施した.要素試験では,三軸試験機を用いた繰返し載荷試験を実施した.本試験では,土の弾性変 形が支配的と想定される微小な荷重を与え,繰返し載荷中の土の剛性変化等について整理した.
  模型実験より,砂地盤では杭に微小な繰返し荷重を与えても極限水平抵抗力にほとんど影響は与え なかった.また,剛性は繰返し載荷中に徐々に増加した.要素試験では,砂試料については繰返し載 荷により体積が膨張し,剛性が低下する場合があるものの,一度比較的大きな荷重が作用すると直ち に体積圧縮が生じて剛性が回復した.また,粘土試料については長期的な微小繰返し荷重は剛性を低 下させるほどではなく,むしろ圧密が進行することにより剛性は増加する傾向となった.

キーワード:開端杭,水平方向抵抗特性,大型模型実験,繰返し三軸試験,洋上風力発電

全文 TECHNICAL NOTE1408(PDF/8,899KB)