研究について

研究成果

テイラー級数近似と重みつき最小二乗法を用いたMaterial Point Method の高度化

発行年月 港湾空港技術研究所 報告 62-2-1 2023年06月
執筆者 中村 圭太、松村 聡、水谷 崇亮
所属 地盤研究領域 基礎工研究グループ
要旨

 本稿はComputer Methods in Applied Mechanics and Engineering で出版された論文“Taylor particlein-cell transfer and kernel correction for material point method” の日本語訳版である.
 Material point method(MPM)は,工学分野において大きな変位や変形を伴う問題の解決に広く用いられてきた.MPM のオリジナルの定式化は,FLIP(fluid-implicit-particle)法を採用しており,PIC(particle-in-cell)法に比べ,計算時の散逸は少ないが安定性も低い.Affine PIC(APIC)法はアフィン速度を導入し,PIC 法における角運動量の散逸を克服しながら安定したシミュレーションを実現した.本論文では,APIC 法の一種である一次のテイラー級数近似に基づくアフィン速度とPIC 法を組み合わせたTaylor–PIC(TPIC)法を示す.TPIC 法は極めてシンプルで(粒子速度勾配のみ必要),散逸の少なさや安定性といったオリジナルのAPIC 法の主要な利点を受け継いでいる.APIC 法とは異なりTPIC 法は角運動量を厳密には保存しないが,粒子と背面格子の間の輸送において速度勾配が保存される.この速度勾配は,その反対称成分に角運動の情報を含んでいるため,TPIC 法はAPIC 法と同様に角度運動を適切に記述することができる.
 また,MPM は境界条件が明示的に課される場合,すなわち背面格子の境界上の速度(または運動量)が設定される場合,境界付近で応力振動を引き起こすことがある.アフィン型の輸送を用いる場合,この不安定性は悪化し,シミュレーションが容易に破綻する.そこで,境界付近の粒子にカーネル関数を補正するカーネル補正法を提案する.提案したTPIC 法とカーネル補正法は,線形弾性体,vonMises,Newtonianfluid,Drucker–Prager の材料モデルを用いて5 種類のシミュレーションで検証した.シミュレーションでは,小さな変形でも応力振動による解析誤差が観察されたが,カーネル補正法を適用することでこれらの振動を除去することに成功し,結果は解析解と一致した.また,解析結果よりTPIC 法の精度とロバスト性が確認できた.

キーワード:Material point method,Particle-in-cell 法,Fluid-implicit-particle 法,Affine particle-in-cell法,カーネル補正法,境界条件

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