研究について

研究成果

ペトロラタム被覆防食工の耐久性に関する検討

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 No1402 2022年03月
執筆者 西田孝弘、山路徹、橋本永手、川瀬義行、志鶴真介、一瀬拓也、今井篤実、小林厚史、吉田 倫夫
所属 構造研究領域 材料研究グループ
要旨

 本稿では、ペトロラタム被覆防食工の劣化進展メカニズムや、ペトロラタム被覆防食材の有効的評価手法を検討し、今後の維持管理へ繋げることを目的として、既往の文献データを整理するとともに、室内試験および屋外曝露試験を実施し、結果をまとめた。さらに、ペトロラタム被覆防食工の劣化進展メカニズムを示すとともに、それを考慮した維持管理手法を提案した。以上の結果より、以下の知見を得た。

 ・ ペトロラタム被覆防食工は、保護カバー設置時の外圧と鋼材の凹凸に伴う内圧の影響で、設置当初からペトロラタム系防食の油分流動が発生している。当該流動は日照等の入熱作用で助長し、基布の目に沿って移動、流出する。供用中の防食機能低下の起点は保護カバーの端部や突き合わせ部であり、前者は端部シールの亀裂・剥離部に、後者はボルトの緩みや日照影響によるペトロラタム系防食材の油分偏肉部により、基布の目に沿いながら部分的に水分が鋼材まで達し腐食する水分浸透形であることが推察された。

・ ペトロラタム被覆防食工の防食機能低下は、選択的かつ部分的であるため、起点となる保護カバーの継ぎ目や突き合わせ部の観察が重要となることが分かった。

・ ペトロラタム被覆防食工の劣化メカニズムの推定より、ペトロラタム系防食材は設置初期から油分残存率が変動し、供用過程での日照影響等で油分変動が助長されながら水分の浸透により防食機能は低下する。このことから、初期から供用中期ではペトロラタム系防食材の油分変動の動向を確認するための油分残存率傾向を、供用中期以降では防食性能による劣化傾向と寿命予測が可能と思われる絶縁抵抗測定を提案した。また健全性の絶縁抵抗率の指標として、本研究成果としては絶縁抵抗105Ω・m2を提案した。

キーワード:港湾鋼構造物、防食工、ペトロラタム被覆、促進試験、曝露試験、劣化進展

全文 TECHNICALNOTE1402(PDF/7,884KB)