研究について

研究成果

劣化したPC桟橋上部工の構造性能に関する解析的検討

発行年月 港湾空港技術研究所 報告 60-3-1 2021年12月
執筆者 田中 豊、川端 雄一郎、加藤 絵万、鈴鹿 良和、河邊 修作、中嶋 道雄、石井 豪、立神 久雄、小笠原 哲也
所属 構造研究領域 構造研究グループ
要旨

 PC桟橋上部工下面部の目視点検において、ひび割れまたは錆汁がある場合には、劣化の発生箇所や程度に関わらず劣化度はaと判定される。PC桟橋上部工下面の点検診断項目の分類はI類であるため、劣化が確認されると性能低下度は機械的にA:施設の性能が相当低下している状態と評価される。しかし、劣化の発生箇所、程度や数量によってPC桟橋上部工の性能低下度合いは異なると考えられる。そのため、劣化を考慮したPC桟橋上部工の構造性能を評価する手法が必要であり、有限要素法(FEM)解析等の数値解析手法が有効と考えられが、PC桟橋上部工の設計では、一体版構造として設計されており、一般的に格子解析が用いられている。本検討では、①劣化したPC桟橋上部工の構造性能を一体版構造として把握すること、②劣化したPC桟橋上部工の構造性能評価における格子解析の適用性について検討することを目的とした。①について、様々な劣化状態を想定し、非線形FEM解析によりPC桟橋上部工の耐荷力を評価した。②について、格子解析においても①と同様の劣化状態を想定した数値解析を実施し、非線形FEM解析の結果と比較し、適用性を検討した。
 ①について、本検討の範囲では、劣化したPC桁が複数本存在する場合でも、一体版構造としては耐荷力を有している可能性が示唆された。②について、荷重に対する応答が線形と考えられるような応力状態やPC桁の剛性が著しく低下していない場合は、非線形FEM解析と格子解析との差が小さく、格子解析が適用できると考えられる。以上の結果を踏まえて、本検討では維持管理の実務における数値解析の活用方針を示した。


キーワード:PC桟橋上部工、数値解析、FEM解析、格子解析

全文 REPORT60-3-1(PDF/14,771KB)