研究について

研究成果

名古屋港飛島地区における鋼管杭の打込み記録の分析と施工管理手法に関する一考察

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1388 2021年09月
執筆者 水谷 崇亮、松村 聡、藤田 亨、竹内 泰弘、可児 昌也、三枝 弘幸、岸 靖
所属 地盤研究領域 基礎工研究グループ
要旨

 港湾施設の基礎工に用いる鋼管杭を打撃施工する際には、ハイリー式を用いた施工管理を行うのが一般的である。しかしながら、ハイリー式による杭の軸方向押込み抵抗力の推定値は大きくばらつくことが知られている。ハイリー式の計算に用いる杭の貫入量、リバウンド量などの計測値は、施工時の油圧ハンマーの打撃エネルギー(入力エネルギー)の影響を受けることが考えられ、ハイリー式による推定値のばらつきはその影響を受けていることが推測される。そこで、名古屋港飛島地区における桟橋支持杭の施工に際し、各杭の施工時の入力エネルギーを揃えた状態で貫入量、リバウンド量の計測を行い、その相互関係等について検討した。
 検討の結果、入力エネルギーと打撃回数の積として得られる累積エネルギーの深度方向の変化が地盤のN値の変化傾向と一定程度対応することを確認した。また、入力エネルギーを一定にして貫入量の値を確認することで、ある杭が他の杭と同様な施工状況となっているかどうか判断する参考資料とできる可能性を示した。一方、リバウンド量は入力エネルギーを一定とした場合でもばらつきが大きく、施工管理指標としてはやや劣るものと思われる。さらに、今回得られた計測値によると、ハイリー式による推定値は入力エネルギーと貫入量の比に概ね比例することを示した。入力エネルギーと貫入量の比は、入力エネルギーを一定として計測した貫入量よりはばらつきが大きいものの、ある程度は施工管理の参考となりそうである。
 以上のように、入力エネルギーを一定として貫入量やリバウンド量を計測することで比較的ばらつきの小さい施工管理指標を得られる可能性が示されたが、この関係が他の現場で成立するかどうかについては今後さらに検討を進める必要がある。各現場で得られる施工時の計測値の深度方向の変化傾向や計測値相互の関係の変化傾向等を慎重に、かつ、総合的に検証することで、施工した杭が、載荷試験により軸方向押込み抵抗力を実測した杭や、同現場の他の杭と同じように施工できているかを確認していくことが重要であると考えられる。

キーワード:鋼管杭、打止め管理、ハイリー式、衝撃載荷試験、貫入量、リバウンド量

全文 TECHNICALNOTE1388(PDF/3,163KB)