研究成果
プレート境界断層デコルマ帯におけるスロースリップ発生メカニズムに関する研究
発行年月 | 港湾空港技術研究所 報告 60-1-6 2021年06月 |
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執筆者 | 杉山 友理・橘 伸也・森川 嘉之 |
所属 | 地盤研究領域 土質研究グループ |
要旨 | 近年の地震・地殻変動観測網の充実により、今までの観測では捉えることのできなかったプレート境界断層浅部(デコルマ帯)のスロースリップと呼ばれる通常の地震に比べて遅い断層滑り速度で歪を解放する現象が観測された。さらに、東北地方太平洋沖地震で発生した巨大津波の原因となった海底地殻変動が生じたのは、まさにデコルマ帯であったことが地震後の掘削調査で明らかになった。地震波がスロースリップ領域に伝播すると、デコルマ帯でも急速なすべりが生じ、地震の規模が巨大化し、さらに巨大津波を引き起こすことになる。そのため、デコルマ帯におけるスロースリップ発生メカニズムの解明が急がれている。デコルマ帯はスメクタイトに富んだ遠洋性粘土で構成され、プレート沈み込み帯では、スメクタイトがカリウムイオンの供給と温度上昇に伴ってイライトへ相転移(変質)することが知られている。このことから、スメクタイトからイライトへの変質がスロースリップ発生要因の一つであると考えられている。しかしながら、デコルマ帯でのスロースリップ発生メカニズムの検討において、変質により生じる間隙水圧変化がプレート沈み込みによるせん断を受ける際の力学挙動に及ぼす影響について検討された例はほとんどない。本稿では、スメクタイトのイライト化をモデル化し、デコルマ帯で観測されるスロースリップ発生メカニズムの理論的な解釈を試みた。 |
全文 |
REPORT60-1-6(PDF/2,804KB)
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