研究について

研究成果

仮設被覆工の耐波安定性について

発行年月 港湾空港技術研究所 報告 60-1-4 2021年06月
執筆者 鈴木 高二朗・久保田 博貴・田中 敦
所属 海洋研究領域 耐波研究グループ
要旨

 仮設の被覆材として早期施工が可能な石かごや網袋式袋詰工、大型土のうが設置される場合がある。近年頻発する高波・高潮災害を受けて、仮設被覆工は応急復旧対策として今後もますます需要が増えるものと考えられる。しかし、これらの仮設被覆工については耐波安定性に関する検討が不十分であり、どの程度の波まで適用できるかが不明確である。そこで本研究では、これらの被覆材の耐波安定性を評価するための照査法を確立することを目的として大型の水理模型実験を実施した。その結果、以下のことが明らかとなった。1)護岸前面斜面の被覆材の波に対する安定性を調べたところ、網袋式被覆工、石かご、土のうの重積みの場合のKD値はそれぞれ、4.4,4.1,0.2だった。網袋式被覆工、石かごは同等程度の耐波・耐越流安定性を有しており、土のうは安定性が低かった。また、被覆材の平積みでの設置は、重積みよりも安定性が低下する。2)津波の越流に対する腹付被覆工での安定性を調べたところ、網袋式被覆工と石かごのイスバッシュ定数yは同程度だったのに対し、土のうのイスバッシュ定数yは小さかった。3)護岸上の越波に対する仮設工を調べたところ、土のうを1列1段で設置した場合は滑動よりも転倒によって被災を受け易く、被災の程度は合田波圧と概ね比例し、力のモーメントの中心点を土のうの直径の1/3程度沖側へずらして計算すると、土のうの飛散の有無を推定することができる。4) 土のうを岸側へ後退させると若干安定性が向上する。5)籠網で土のうを連結すると安定性が増し、連結しない場合と比較して1.5倍ほどの波高まで耐えることができる。

キーワード:仮設被覆工、網型袋詰め工、石かご、土のう、ハドソン式、イスバッシュ式、越波、津波越流、高潮

全文 REPORT60-1-4(PDF/7,478KB)