研究について

研究成果

第三世代波浪推算モデルの内湾波浪推算への適用性-メソスケール気象モデルの導入-

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1061 2003年09月
執筆者 川口浩二、杉本彰、橋本典明
所属 海洋・水工部 主任研究官
要旨  近年、第三世代波浪推算モデルWAMを利用した外洋の波浪推算においては、その推算精度の高さが確認され、我が国においても幾つかの実施例が報告され始めている。しかしながら、実際の港湾・海岸の事業分野で必要とされ利用される沿岸域、とりわけ内湾の波浪推算においては、幾つかの検討すべき課題が残されたままであり、実務への導入が遅れているのが現状である。この問題点の一つに波浪推算に必要な海上風の精度の問題がある。海上風の精度は波浪推算の精度を直接左右する重要な要素であるため、外洋はもとより特に内湾域では詳細な海上風データが要求される。これは内湾海上風が陸地の影響を受けて複雑で局地性の高い現象であるためである。このような複雑な内湾海上風を推算するため、東京湾を対象に陸地や種々の気象要素の影響を考慮したメソスケール気象モデルを用いて内湾海上風を推算し、その精度を検討した。さらに、荒天時のみならず静穏時も含む切れ目のない波浪推算を実施するため、メソスケール気象モデルで推算された内湾海上風を第三世代波浪推算モデル恥MおよびSWANに適用し、波浪推算を実施した。  検討の結果、メソスケール気象モデルによる内湾海上凰の推算精度は高く、内湾波浪推算への適用に有用であることが確認された。また、この推算海上風を利用した内湾波浪推算では、WAMで推算する波浪スペクトルの周波数計算範囲を高周波数側へ拡張することにより、荒天時のみならず静穏時も含む連続的な波浪推算が精度良く実施できることが分かった。また、このような長期間にわたる連続波浪推算を実施する場合、計算負荷が小さいWAMの適用が有利であることが確認された。一方、SWANは、計算負荷が大きく連続的な波浪推算には不向きであるが、その汎用性・適用性の高さから、極浅海で狭領域の詳細な波浪場の推算に適していると考えられ、今後更に検討する必要があることが示唆された。
全文 /PDF/no1061.pdf