VOO ( Vessel of Opportunity)を利用した油回収システム

VOO ( Vessel of Opportunity)を利用した油回収システム

 油流出事故は全国各地で発生する可能性があります.国土交通省では3隻の大型油回収船で48時間以内に日本全国をカバーする体制をとっておりますが,必ずしも十分な体制であるとは言えない状況にあります.専用の油回収船以外に油回収に転用できる船があると,早期に,効率的に油回収を行えると考えられます.

 2010年4月に発生したメキシコ湾における油流出事故の際は,専用の油回収船以外に漁船や工事用作業船が油濁対策に活用されました.このように専用の油回収船以外の船舶を油濁対策に活用することをVOO ( Vessel of Opportunity)といい,VOOのシステム化による効率的な油回収作業が期待されています.

 港湾空港技術研究所では,全国に900隻余りあるクレーン台船を緊急時に油回収作業に転用するため,緊急時に4トントラック2台程度に積載して陸送できる油回収システムの開発をしました.本システムは,「かき寄せバケット式スキマー」と「自動展張式オイルブーム」をパッケージとしています.実油による大型水槽実験によって性能の確認を行い,また,その縮小プロトタイプモデルを製作し,鳥取県境港での実海域での運用試験を行いました.

 その結果,かき寄せバケット式スキマーについては,水槽実験により,油膜厚さ2cm程度の条件で, 1時間に約5.9トンの油分が回収でき,(Oil Recovery Rate 5.9 t/h )このときの油水中の余水は30%に抑えられる(Oil Recovery Efficiency 70 %)ことが推算(実機サイズ換算)できました.これは同時に実験したグラブバケット方式の5.7 t/h (Oil Recovery Rate )および余水分66%(Oil Recovery Efficiency 34%)を上回る性能でした.また,実海域における運用試験においても本回収機の組立やオペレーション上の問題は特にありませんでした.

 一方,自動展張式オイルブームについては,流速0.5knt(約25 cm/s)以上において,その目的である集油ブームとして必要な間口を確保し,安定的にオイルブームを展張しつづけられることが水槽試験で確認できました.しかしながら,海上での運用試験においては,航跡波による横波の影響を受けやすかった事実から,波向きに配慮する必要があることがわかりました.また,若干の構造上の改良で現地組立が簡単になることがわかりました.

図 工事用作業船の油回収作業への転用システム

 

参考文献:

吉江宗生・藤田勇・竹崎健二:工事用作業船を転用した油回収システムの開発,港湾空港技術研究所資料,No.1185, 2008

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