薬剤を利用したインラインエマルジョン分解 In-line emulsion breaking using chemical agent
重油や重油成分を含んだ原油が海上に流出すると波等の攪拌により水と油が混合されエマルション化(乳化)します. エマルション化した油は粘度が高く,ポンプを詰まらせるなど扱いが困難となります. 薬剤(界面活性剤)はエマルションを水と油に分離する効果があるため,薬剤を使ったインラインエマルション分解の研究開発を行っています.
ポンプ等でエマルション化した油の配送を行う際の管内摩擦損失の低減に関する研究を行いました. 少量の界面活性剤の添加が圧力損失の低減に効果的であることを示しました. これは管壁と油の間に発生したせん断力でエマルションブレークし,水によって摩擦損失が低減したことによると考えられます. 実験では強制攪拌装置を用いた場合と,強制攪拌を行わずに界面活性剤のみを添加した場合を検討し,強制攪拌を行わなくても,圧力損失が低減されることがわかりました.
国土交通省近畿地方整備局の所有する海面清掃兼油回収船「クリーンはりま」には,配送管路内の摩擦損失を低減させるために薬剤注入システムが導入されています.
As demonstrated in the "ET-1" study, water injection has been found to be an effective method for reducing friction loss in pipelines carrying W/O emulsions. Building on this work, our study explores the use of chemical agent injection as an alternative approach. By injecting a demulsifying agent into the pipeline, the W/O emulsion is broken down near the pipe wall, creating a layer of free water that effectively isolates the high viscosity W/O emulsion from the pipe wall. This technique has been successful in reducing friction loss and has been implemented in a practical application on the oil recovery vessel "Clean Harima".
図 摩擦損失低減を目的とした薬剤注入システムが導入されている海面清掃兼油回収船「クリーンはりま」*
*写真は国土交通省近畿地方整備局神戸港湾事務所
参考文献
藤田勇・松崎義孝:W/Oエマルジョンを形成した水-重油系の流動特性と管摩擦損失の制御手法に関する研究 , 港湾空港技術研究所 報告, Vol.52, No.4, pp.75-103, 2013
