仮定した断層面の位置を図-1に示す.断層面は,気象庁による本震の震源(北緯38.607°,東経139.478°,深さ14km)を含むように設定し,走向と傾斜は,F-netによる本震のモーメントテンソル解の二つの節面のうち,余震分布とより整合する東南東傾斜の面を選んだ(走向23°,傾斜36°).長さと幅については余震分布を参考に長さ20km,幅15kmとした.余震1と余震2のそれぞれの発生位置を考慮し南側の長さ8kmの区間には余震1を,北側の長さ12kmの区間には余震2を割り当てた.
インバージョンの手法としてはHartzell and Heaton(1983)によるマルチタイムウインドウ法を経験的グリーン関数に適用できるように改良した手法(野津,2007;Nozu and Irikura,2008)を用いた.この方法では,各々の小断層でのモーメントレート関数は小地震のモーメントレート関数とインパルス列との合積で表される.そのときのインパルス列の高さがインバージョンの未知数となる.破壊フロント(first-time-window triggering front)は,気象庁の破壊開始点から同心円状に拡大するものとした.その拡大速度については,最も残差の小さかった2.7km/sを採用した.その他,非負の最小自乗解を求めるためのサブルーチン(Lawson and Hanson,1974)を用い,すべりの時空間分布を滑らかにするための拘束条件を設けた.観測波と合成波を比較する際には記録のヘッダに記載された絶対時刻の情報を用いている.
インバージョンに用いた観測点における観測波(黒)と合成波(赤)の比較(0.2-2Hzの速度波形)を図-2に示す.図の横棒がインバージョンに使用した区間である.全体に観測波と合成波は良く一致している.新潟県側の村上付近の観測点(NIGH02とNIG007)や佐渡島の観測点(NIG003)では複雑な地下構造に起因すると考えられる後続位相の発達が著しいが,この部分はインバージョンに用いていないにも関わらず観測波と合成波は良く一致している.これは経験的グリーン関数の中に地下構造の影響が含まれているためと考えられる. |