東京湾岸の港湾
(解説)東京湾岸の港湾は東日本大震災の地震動を受けている.対象とした港湾・ゾーンを表1および図1に示す.表1にはレベル1地震動を評価する際にサイト増幅特性の評価に用いられた強震計を示している.ここではこれらの強震計により東日本大震災の際に観測された地震動を,線形の重複反射理論により工学的基盤に引き戻し,レベル1地震動との比較を行った.その際,条件を揃えるため,レベル1地震動の評価に用いられたのと同じ地盤モデルを用いた.川崎港については,東日本大震災による地震動が観測できていないため,事後推定波を用いた.比較結果を図2に示す.2007年頃から整備・公開されてきた各ゾーンのレベル1地震動は,約0.8Hzより高周波側では,振幅や周波数特性という点で,東日本大震災の地震動と極めて良く整合していたことがわかる.例えば千葉港葛南地区では0.8Hz程度の成分が多く2Hz程度の成分は相対的に少ないこと,千葉港千葉中央地区ではそのような傾向が顕著でないこと,などの点で,レベル1地震動の特性と東日本大震災の地震動の特性が良く一致している.一方,0.8Hzより低周波側では全体として東日本大震災による地震動の方が振幅が大きかった.これは東日本大震災の地震規模が大きかったためであると考えられる.このように,東京湾北部の港湾では,(東日本大震災による地震動)≧(レベル1地震動)の関係が成立しているので,東日本大震災に対して十分な耐震性能を発揮した施設については,その後のさらなる高経年化の影響を除けば,レベル1地震動に対して十分な耐震性能を有していると判断できる.一方,東京湾南部の港湾については,図3に示すように,必ずしもこのような関係が成立していない.その理由としては二つのことが考えられる.一つは東日本大震災の際に東京湾南部は震源断層からの距離が多少大きかったことである.もう一つはレベル1地震動の評価において相模トラフで発生する大規模な地震が考慮されていることである. |