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平成15年(2003年)十勝沖地震現場調査速報第3報 (暫定版)
2003.10.27 16:00現在

2. 港湾における強震記録

苫小牧港の長周期地震動とスロッシングの関係

1.ナフサタンクの地震時挙動の推定

港湾地域強震観測網によって得られた苫小牧港(地表)の強震記録(図1)は,長周期成分が卓越するものであった. 過去の地震において液体を貯蔵するタンク(石油,糖蜜等)の被災が発生しており,被災原因として長周期の地震動とスロッシング現象1)が挙げられている.

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図-1 苫小牧港(地表)強震記録

記録された長周期成分とスロッシング現象の関係を,神谷ら2)の用いた軸対称線形ポテンシャル理論により地震時応答を求めてみた. 記録された地震波の速度応答スペクトル(h=0.5%)を図2に示す.図2において東西方向の応答スペクトルが5秒から8秒の範囲で卓越していることがわかる.参考のために2001年芸予地震の際に広島港で記録された速度応答スペクトルも示しているが,これは1〜2秒の範囲が卓越している. 苫小牧港では地下の地盤構造の影響で長周期成分が卓越するものと考えられる.

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図-2 苫小牧港速度応答スペクトル(h=0.5%)

本解析においては,被災したタンクの詳細なデータが手元に無いことから,報道情報を元に直径43m程度のタンクに18m程度の深さのナフサが貯留されていた場合を想定した. 1次固有周期は7秒程度,2次が4秒程度,3次が3秒程度となっており,図2と比較すると1次の固有周期が地震波の卓越周期と一致することがわかる. 表1には最大波高も示しており,東西方向で3m程度(地震到達から50〜60秒)となっている.南北方向の最大波高は2m強(80秒付近)となる. 地震動の卓越周期とスロッシングの固有周期が近かったことに加え,継続時間が2分以上と長かったために,スロッシングにより3m程度の波高となった可能性がある.

表1 仮想ナフサタンクの解析条件および結果
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つまり,長周期の固有周期を有する構造物については,構造物基礎部分の地盤条件(表層から数10メートル程度)に加えて,深い地盤構造に起因する地震動の長周期成分も考慮に入れた検討が必要と考える.

ただし,本解析は,あくまでも苫小牧港で取得された継続時間が長く,長周期成分の卓越した記録を基に,仮想的なタンクの条件で解析をしてみたものであり,実際に被災したタンクの地震時挙動とは異なる可能性がある.詳細な検討が必要である.

参考文献
1) 座間信作:やや長周期の地震動,地震 第2輯,第46巻,pp.329-342,1993.
2) 神谷ら:東京湾岸地域のおけるLNG地下式貯槽のスロッシング検討用地震動の評価,土木学会論文集,No.619/I-47,pp.75-90,1999.