海洋環境制御システム研究領域

海洋観測(東京湾口)

概要

東京湾フェリー、かなや丸

東京湾フェリーは、神奈川県にある久里浜港と千葉県にある金谷港の約10kmを約40分で運行する定期航路です。東京湾の湾口(右図を赤枠内)を往復しています。

東京湾フェリーは、通常、2隻により1日12便から14便のダイヤによって運行しています。ただし、1隻がドック入りしている場合等においては、通常とは異なる運行となります。また、荒天時においては欠航することがあります。

運行している2隻のうちの1隻がかなや丸です。

港空研は、かなや丸に機器を設置させていただき、東京湾口の流動および水質観測を実施しています。

流動観測

流動観測においては、ADCP(Acoustic Doppler Current Profiler)を用いています

機種は、Teledyne RD Instruments社製、WH-ADCPマリナー(300kHz)です

ADCPが設置されているかなや丸の吃水は3.4 mです

計測はADCPから鉛直方向に7.2 m下の場所(水深約11 m)から層厚4 mの領域で行われています。

およそ年1回の定期点検を実施しています。

水質観測

水質は、船底に設けられた取水口から取水した海水を船内の水質測定システムに導水して測定しています。

かなや丸の吃水が3.4 mであるため、これが水質を測定している層となります

測定している水質は、塩分(ETSG2,Falmouth Scientific Inc社製)、水温(SBE 38,SEA-BIRD社製)、クロロフィル濃度(WETStar、WETLabs社製)です

水温は取水口近くで測定しています

塩分とクロロフィル濃度は、取水口から数十mの管路を経た場所で測定しています

測定結果は、一分間隔で記録しています。

およそ年2回の定期点検を実施し、センサー部の清掃を行っています。しかし、メーカーによるキャリブレーションは実施していません。

観測結果

最新データ

直近の1航海分の観測データを公開しています.

上層流速(水深11 m,赤色)と5層目流速(水深25 m,青色),海上風(水色),水質(上から塩分,水温,クロロフィル)のデータが載っています.潮位データ(左下)は,気象庁のデータを利用しています.

tokyo_bay_ferry_english

週間データ

7日前から昨日までの観測結果を動画で公開しています。

Past data

過去のデータ

過去のデータはこちらをご参照ください。

描画方法

水平流速

最も上層の水平流速を示しています

「最も上層」とは、水表面からおよそ11 mの場所から4 mの層となります。

水平流速は、「VM-DAS」ソフトウェアによって20秒平均で出力されたSTAファイルからデータを抽出し、ボトムトラック機能で計測された船速を差し引いたものを表示しています。ただし、抽出された水平流速データのうち、ピングコリレーションが110 count以下のものについては棄却しています。棄却した測定場所は×印で表示しています

描画領域の縦横比は、距離に基づいています。

水質

塩分、水温、クロロフィル濃度は一分間隔で測定した結果を示しています。測定結果の補正は行っていません。

取水した海水は、水温、塩分およびクロロフィル濃度の測定場所までにある程度の時間を要しています。水温測定場所までの到達時間は、経験的に1 分、塩分とクロロフィル濃度測定場所までの到達時間は3 分とし、到達時間に応じて、描画経度を補正しています。

図中の日時は、水質測定システムの測定開始時刻です。実際のフェリーの出航時刻とは異なります。

謝辞

本観測は、かなや丸に港空研の施設を設置させていただくことによって実現しています。東京湾フェリー株式会社の皆さまには、多大なるご協力をいただいています。

観測結果の描画システムは、大阪市立大学、神戸市立工業高等専門学校およびミラノ工科大学の実習生に構築していただきました。

久里浜の潮位データについては、海象情報研究グループの提供によるものです。

布良の潮位データについては、気象庁のデータを利用しています。

ここに、関係者のみなさまへ感謝の意を表します。

参考文献

  • 鈴木高二朗:東京湾の海水交換と貧酸素化に及ぼす淡水流入と風の影響について、 港湾空港技術研究所資料、 No.1276, 2013.9。