沿岸土砂管理研究グループ

汀線近傍に形成される海岸帯水層中の局所循環流に関する研究(1998~99年)

Coastal and Estuarine Sediment Dynamics Group

 海岸帯水層中の地下水の挙動を数値モデルによって調べた。まず、飽和-不飽和浸透流式と塩分の移流分散方程式を連立させ、海面の時間変動を境界条件として取り込むことにより、海岸帯水層特有の地下密度流場を解き、かつ帯水層中に形成される塩水楔の非定常過程を解析し得る数値モデルを示した。この数値モデルを用いて、砂浜海岸における帯水層中の浸透流場を解析した結果、前浜表層においてH。W。L。の汀線付近で下向き、L。W。L。の汀線付近で上向きの、局所的な循環流が形成され、海水が滞留する領域が出現することを明らかにした。さらに、その形成メカニズムに関する考察を行い、循環流が潮汐の作用によって形成されたものであること、帯水層中の密度構造と密接に関連していること、陸域からの淡水フラックスの大小、潮位振幅、海浜勾配等によってもその形態が大きく変化することを見出した。

汀線近傍に形成される海岸帯水層中の局所循環流に関する研究(1998~99年)の画像1

Johannes(1980)による砂浜海岸帯水層に形成される地下浸透流場の概念図。静的平衡状態を模式的に表しており、潮汐等による動的な力学過程は考慮されていないため、実際はこうはならない。

汀線近傍に形成される海岸帯水層中の局所循環流に関する研究(1998~99年)の画像2

数値モデルによる海岸地下帯水層の流況.Case 4とCase 13は、全く同様の砂浜地形に対する計算結果であるが、潮位振幅のみ異なる(Case 4:1m、Case 13:0.5m)。