地盤研究領域 土質研究グループ

粘土試料に対する土質試験技術

Soil Mechanics and Geo-Environment Group

圧密試験

圧密試験の方法は、大きく2つに分類されます。ひとつは、「段階載荷による圧密試験」と称されているもの(従来は「標準圧密試験」とも呼ばれていた)で、もう一つは、「定ひずみ速度載荷による圧密試験」と称されているものです。

まず、土の段階載荷による圧密試験について見てみましょう。試験方法の概要を図-2.8に示します。標準的な供試体の寸法は直径60mm、高さ20mmで、剛性の高い金属製圧密リングにセットし、圧密試験器を組み立て、図-2.8(a)のように載荷段階に応じた重錘を準備します。載荷圧力pを5kPaあるいは10kPaから始め、圧力増分比Δp/p=1として、すなわち、現在載荷されている圧力と同じ圧力を増分として、24時間ごとに載荷するのが一般的な試験方法です。したがって、圧密圧力は、5,10,20,40,80,160,320,640,1280kPaとなります。

(a)試験前の画像

(a)試験前

(b)第3段階の載荷の画像

(b)第3段階の載荷

(c)第6段階の載荷の画像

(c)第6段階の載荷    

(d)最終段階の載荷の画像

(d)最終段階の載荷

(実際の試験装置は、てこの原理を利用して小さな重錘で大きな圧密圧力を生み出します)

土の粒子の詰まり方を密にすることにより密度を高める方法には、締固めと圧密とがあります。締固めは不飽和土の中に存在する間隙中の空気を追い出すことにより密度を高めるのに対し、圧密は飽和土の中に存在する水を追い出すことにより密度を高めます。空気が追い出されるのに時間はさほどかかりませんが、水が追い出されるのには長い時間がかかります。特に、粘土のように圧密が実施されるような土質材料では透水係数が小さいために、圧密という現象が生じるのにはかなり長い時間がかかります。ですから、締固め試験では気にする必要はなかった「時間」を圧密試験では考慮する必要がでてきます。段階載荷圧密試験では、各圧力段階で重錘を載せた時の沈下と時間の関係を計測します。

図2.9 時間沈下曲線と結果の整理の画像

図2.9 時間沈下曲線と結果の整理

縦軸に沈下量の読みdの算術目盛、横軸に経過時間tの平方根をとってプロットしたものを模式的に示したものが図-2.9です。初期には直線で表される部分が現れ、この直線の横距を1.15倍した直線と沈下~時間曲線の交点に相当する時刻t90求めます。

一次元圧密の支配方程式は、次式により表されます。

粘土試料に対する土質試験技術の画像1

ここで、Δuは過剰間隙水圧、tは経過時間、zは鉛直座標、cvは圧密係数です。供試体の排水距離をH*とすると、経過時間tはcvとH*により次式のように無次元化することができ、その無次元量は時間係数Tvと呼ばれています。

粘土試料に対する土質試験技術の画像2

なお、供試体の上下面から両端排水とする試験の場合H*は供試体高さHの1/2、上面からのみ片端排水とする試験の場合H*は供試体の高さHとなります。圧密圧力増分に対する過剰間隙水圧の消散量の割合を圧密度Uと称し、載荷直後の圧密度は0%、一時圧密終了時の圧密度は100%で、上で説明したd90, t90は圧密度90%に相当します。圧密度に対する時間係数Tvは理論的に求められ、表-2.1で与えられています。

U(%) 10 20 30 40 50 60 70 80 90 95
Tv 0.008 0.031 0.071 0.126 0.197 0.287 0.403 0.567 0.848 1.13

このように、圧密度Uと時間係数Tvは1対1の対応をしています.したがって、同じcvを有する粘土の場合、最大排水長H*が2倍、4倍、6倍・・・と異なると、圧密に要する時間はそれぞれ4倍、16倍、36倍・・・になることは次式により明らかです。

粘土試料に対する土質試験技術の画像3

サンドドレーン工法やプラスチックボードドレーン工法などに代表されるバーチカルドレーン工法は、未改良の時には鉛直方向に非常に長い排水距離H*を有していた地盤に対し、鉛直方向の排水層を狭い間隔で設けることにより、水平方向へ非常に短い排水距離H*を確保して飛躍的に圧密を促進させることができる地盤改良工法なのです。

図-2.9で示したように、√t法では圧密度U=90%の経過時間t90を求めています。ですから、これに対応するTv(Tv90)を知っていれば次式により圧密係数cvを算出することができます。

粘土試料に対する土質試験技術の画像4

表-2.1からTv90=0.848であることがわかります。log t法や曲線定規法(説明は学会基準や他書をご参照ください)で用いるTv50(=0.197)とともに、技術者としてTv90の値は覚えておく必要があるでしょう。

圧密係数cvと図-2.9内で定義している体積圧縮係数mv(ヤング率の逆数のようなもの)とを用いて、次式により透水係数kを算出することができます。

粘土試料に対する土質試験技術の画像5

ここで、Ρwは水の密度、gは重力加速度です。2.2節で解説したように、透水性が高い材料に対しては定水位透水試験により、また、透水性が低い材料に対しては変水位透水試験を実施することにより透水係数を求めます。しかしながら、粘土のように非常に透水性が低い材料に対して変水位透水試験を実施した場合、膨大な時間を必要とすることから実用的な試験方法であるとは言い難く、さらに、試験中にビュレットから蒸発する水の量を無視し得なくなるなどの問題も発生します。このため、粘土の透水係数は圧密試験により求めることが一般的です。