走査型電子顕微鏡(SEM)は、電子銃で発生させた電子線を対象物表面上に走査させ、反射した電子を検出することで対象物の表面形状をデジタル画像化する装置であり、数十倍から数十万倍の幅広い倍率で観察することができる。本研究では日本電子株式会社製の電子顕微鏡(JSM-5900LV)を使用した。装置の外観を写真1に示す。
写真-1 電子顕微鏡の外観
使用したSEMでは、高真空モードと低真空モードの2通りの観察方法が可能である。高真空モードによる観察は、顕微鏡内を高真空状態(10-1~10-5Pa)に維持し、電子線の流れや反射により観察を行う。高真空を実現するため、観察試料は完全乾燥状態でなければならない。また、試料上に電子が蓄積しないように、試料表面を導電加工する必要があり、金等の導電物質の微細な原子を蒸着させておく必要がある。一方、低真空モードによる観察は、顕微鏡内を低真空状態(20~70Pa)にすることで、入射電子と試料近傍の空気分子(酸素、窒素など)とが衝突して空気中の分子をイオン化し、試料上に留まった電子をイオンで中和させる。このようにすると若干の水や油を含んだ湿潤状態にある導電性のない試料もそのままの状態で観察することができる。しかし、高真空モードの観察画像と比較すると画質は低下する。観察画像の例として、高真空モードで撮影した粘土の内部骨格構造(瞬間凍結後に破断して観察面を作成しフリーズドライにした試料を観察)を写真-2~8に、また、低真空モードで撮影した気泡混合処理土の内部骨格構造を写真-9に示す。
写真-2 粘土のSEM観察画像例
写真-3 粘土のSEM観察画像例
写真-4 粘土のSEM観察画像例
写真-5 粘土のSEM観察画像例
写真-6 粘土のSEM観察画像例
写真-7 SEM観察画像の例
写真-8 粘土のSEM観察画像例
写真-9 気泡混合処理土のSEM観察画像例