インバージョンに用いた観測点(図-1の▲)における観測波(黒)と合成波(赤)の比較(0.2-2Hzの速度波形)を図-4に示す.これらの図において長方形で示した部分がインバージョンに用いた区間(15秒間)である.観測波と合成波の一致度を示す指標として,式(1)で定義されるVRを求めたところ,VRの全観測点に対する平均値は61.1%となった.
(1)
ここにs(t)は合成波,o(t)は観測波である.積分区間はインバージョンに用いた区間と一致させた.
なお,図-2に示す震源モデルの小断層毎,時間ウインドウ毎のモーメント解放量(その要素に割り当てられた余震のモーメントに対する比)を参考のためテキストファイルに示す.
ここで得られた結果を,同じ地震を対象とした別の波形インバージョン結果と比較してみると,互いに整合する部分と整合しない部分があるが,例えば浅野他の結果(http://sms.dpri.kyoto-u.ac.jp/k-asano/pdf/2016KumamotoEQ_v20160417.pdf)と比較すると,断層面の南西側では主に深部がすべっており,断層面の北東側では深部と浅部がすべっているという点では,互いに結果が類似している.使用したグリーン関数は本研究が経験的グリーン関数で浅野他が水平層構造の理論的グリーン関数,使用した観測点は本研究は震源近傍が多く浅野他はやや離れた地点が多いという違いがあるにも関わらず類似した結果に至ったことから,これらの震源モデルにより破壊過程の重要な部分は捉えられていると考えている.
また,破壊開始点とKMMH16(益城)の間にアスペリティが来る結果とはならなかった.したがって本震における益城の大振幅地震動をforward directivityによるものとして解釈することには無理がある.
謝辞:本研究では(独)防災科学技術研究所のK-NETの強震記録,F-NETのCMT解と強震記録,気象庁の震源データを使用しています.ここに記して謝意を表します.
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