2003年十勝沖地震の震源モデル
-デジタルデータ付き-
(BSSA, Vol.98, No.1の震源モデル) |
経験的グリーン関数を用いた波形インバージョンにより2003年十勝沖地震(Mj8.0)の破壊過程を推定した.対象周期は1-10秒とした.本震と伝播経路特性,サイト特性を共有するような余震を選択して用いるため,本震の断層面を3つの領域に分割し,表-1に示す3つの余震を各領域に割り当てた.本震,余震1,余震2,余震3の記録がすべて得られているK-NET,KiK-netの観測点のうち,余震記録のSN比が十分確保されており,かつ,本震時の地盤の非線形挙動の影響も小さいと考えられる38地点を選択し,そこでのRADIAL成分の速度波形(0.1-1Hz),計38成分をインバージョンのターゲットとした.これらの観測点を図-1に示す.インバージョンには本震波形のS波を含む30秒間を用いた.RADIAL成分を使用した理由については論文を参照していただきたい.
インバージョンで仮定した断層面の位置を図-1に示す.図-1の★はインバージョンで仮定した破壊フロント拡大の中心点を意味しており,その座標は(北緯42.039°,東経143.925°,深さ30.1km)である.また断層面の走向は246°,傾斜は18°,長さ120km,幅120kmである.
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表-1 本震と余震のパラメタ
図-1 インバージョンに用いた観測点とインバージョンで仮定した断層面
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インバージョンはHartzell and Heaton(1983)の方法に基づいている.120km×120kmの断層を30×30の小断層に分割し,それぞれの小断層では破壊フロント通過後の6.0秒間に12回のすべりが許されるものとした.各々のすべりによるモーメント解放量が余震モーメントの何倍であるかを未知数としてインバージョンを行う.破壊フロントは図-1の★から同心円状に速度2.6km/sで広がるものとした.基盤のS波速度は3.8km/sとした.インバージョンには非負の最小自乗解を求めるためのサブルーチン(Lawson and Hanson,1974)を用いた.また,すべりの時空間分布を滑らかにするための拘束条件を設けた.観測波と合成波を比較する際には記録のヘッダに記載された絶対時刻の情報を用いている.
図-2にインバージョンの結果として得られた最終すべり量分布を示す.同図に示すように,襟裳岬の東方沖と直別沖,それに広尾町付近の3箇所にアスペリティを有する最終すべり量分布が得られた.図-2に示す最終すべり量分布はMW=8.1に相当する.図-3にすべりの時空間分布を示す.
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図-2 インバージョンの結果として得られた最終すべり量分布
図-3 すべりの時空間分布
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インバージョンに用いた観測点における観測波と合成波の比較を図-4に示す.図-4において,ハッチングをした部分がインバージョンに用いた部分である.観測波と合成波の一致は良好である.インバージョンに用いなかった後続位相もある程度再現されている.
なお,図-2に示す震源モデルの小断層毎,時間ウインドウ毎のモーメント解放量(各小断層に割り当てられた余震のモーメントに対する比)を参考のためテキストファイルに示す.
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(グラフをクリックすると拡大します)
TKCH07 TKCH08
TKCH10 TKCH11
HKD096 HKD098
HKD113 HSRH01
HSRH02 HSRH03
HSRH04 HSRH05
HSRH06 HSRH07
HSRH09 HSRH10
NMRH02 NMRH04
NMRH05 ABSH07
ABSH12 ABSH13
ABSH14 ABSH15
図-4 観測波と合成波の比較
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謝辞
本研究では(独)防災科学技術研究所のK-NETおよびKiK-netの強震記録,F-netのCMT解,気象庁の震源データを使用しています.ここに記して謝意を表します. |