突堤群による掃流砂土砂収支の数値的検討

論文概要

突堤群による掃流砂土砂収支の数値的検討

突堤構造物周辺の掃流砂量を波と流れ場によって生じる外力をもとに計算し,突堤群による漂砂遮断効果や突堤周辺の土砂収支が数値検討された.突堤周りの4つの領域(漂砂上手突堤内,上手突堤外,下手突堤内,下手突堤外)での土砂収支計算では,突堤端が砕波開始点を越えると下手突堤内の土砂収支がマイナスに転じ,漂砂遮断による下手側の侵食が始まることが示された.また,突堤による沿岸掃流砂の阻止率が定量的に示された.計算は限定された底質・地形・波浪条件で行われており,結果の適用においては,異なる条件での検討による一般化が必要である.


 

 

沿岸方向に同じ地形と構造物が繰り返し連続する境界を沿岸方向に設定し,沿岸方向に無限に続く一様勾配斜面上にある突堤群の計算を行った.また,沖側境界からの入射波は,規則波とし入射角度を沖側境界で波長の整数倍の位相が生じる角度とすることによって入射波分布を一様にした.また,沖側境界外に減衰計算領域を設けることにより,沖境界での再反射の低減を図った.計算は,静止状態から波を入射し,海浜流速がほぼ定常になるまで行った.この間の地形変化量については考慮せず,初期地形での波や流れの計算と掃流砂量の計算とした.計算結果は,突堤端を基点とした4つの領域に分け,漂砂上手突堤内,漂砂上手突堤外,漂砂下手突堤内,漂砂下手突堤外として土砂収支を計算した(左図).また,突堤長を表すパラメータとして,突堤端から遡上端(ここでは波による平均汀線の移動位置)までの有効突堤長leと,砕波開始位置から遡上端までの砕波帯幅lbとの比を用いた.

左図は,非通過率を計算するときに基準となる突堤の無い海岸での岸沖の断面で積分して求めた全沿岸掃流砂量(単位:m3/day)を計算したものである.これらの掃流砂量は,それぞれの砕波波高と砕波波向を用いて計算されるCERC公式による沿岸漂砂量とオーダー的に合致している.

突堤による沿岸掃流砂の非通過率(阻止率)は,突堤が無い場合の沿岸総掃流砂量と突堤がある場合の沿岸総掃流砂量との比で定義した.ここで沿岸総掃流砂量は,左図の沿岸掃流砂量分布の汀線から沖までの積分で計算する.

左図は,突堤による沿岸掃流砂の非通過率を求めたものである.入射角がいずれの場合もle/lb=1.0周辺で非通過率が急増しており,椹木・出口(1982)による全沿岸漂砂の突堤捕捉率と同様の結果となっている.

 

 

左図は,突堤端を基点とする4領域の収支を計算したものである.突堤長がle/lb=0.7程度までの場合には漂砂上手・下手側の突堤内ともにプラス収支(堆積)が生じているが,突堤端が砕波位置に近づくと上手側突堤内部がマイナス収支(侵食),下手側突堤内部も減少傾向になる.その一方で,上手側突堤外部がプラス収支(堆積)が生じていることが分かる.
突堤端が砕波点を越えると,下手突堤内の収支がマイナスに転じ,漂砂遮断による下手側の侵食が始まることが分かる.

 


 

 大規模突堤群による突堤群内の土砂安定と,突堤下手側の侵食を定量的に示した.
初期地形での掃流砂量と土砂収支を計算したものであり,漂砂による地形変化が波や流れの場を徐々に変化させ,その結果として掃流砂量が減少し,安定した地形となるまで過程を計算したものではない.また,波高と周期を限られた条件で行っているので,波と流れによる地形変化のすべてが把握されたものではない.

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