アマモは海中からだけでなく大気中のCO2も直接吸収している

2015年12月4日更新

アマモは海中からだけでなく大気中のCO2も直接吸収している

国立研究開発法人 港湾空港技術研究所 沿岸環境研究チームの渡辺謙太研究官と桑江朝比呂チームリーダーは、日本沿岸の浅場に分布するアマモ(海草*1)が、海中に生息していながら大気中の二酸化炭素を直接吸収していることを世界で初めて実証しました現在、気候変動の緩和策として、ブルーカーボン*2(海洋生物による二酸化炭素の貯留機能)が注目され始めています。この研究成果は、海草が大気中二酸化炭素濃度上昇の抑制に貢献し得ることを示しています。  

本研究成果は、2015年10月30日付の欧州専門科学誌Biogeosciences電子版に掲載されました(論文のPDF)。



*1海草場:静穏で浅い砂泥性の場によく発達する、アマモ類などの海草類で構成された場のこと。岩礁において発達するコンブやワカメなどで構成された藻場とは区別される。

*2ブルーカーボン:陸上の森林などに蓄積される炭素(グリーンカーボン)の対語で、海洋生態系に蓄積される炭素のこと。国連環境計画(UNEP)が2009年に新たに命名。

 

【背景】
現在、海草場や干潟、マングローブなどの浅海域生態系はその堆積物の中に非常に多くの炭素をストックする場として注目されるようになってきました。炭素は有機物の形でストックされているため、様々な起源を持つ有機物の動態は炭素の貯留機能に大きな影響を与えると考えられます。しかし、定量的な関係性はこれまで分かっていませんでした。

【成果の内容】
今回、港空研は,風蓮湖(北海道根室市)の海草場において採取された試料について、放射性炭素同位体分析を実施することにより、日本の河口域や内湾に生息する海草(アマモ)が大気中から直接CO2を吸収していることを実証しました(図-1)。

【解説】
全国の河口域や内湾の砂泥底に生息しているアマモなどの海草が発達した海草場は、これまで魚介類の成育の場(海のゆりかご)や海水浄化の場として、その有益な機能が広く知られてきました。近年、これらの機能に加えて、気候変動の原因物質とされているCO2の吸収・貯留機能(ブルーカーボン)についても注目されるようになってきました。

これまでアマモは海中に生息しているので、光合成の際に海中のCO2を利用するというのが通説でした。しかし私たちは、潮位が下がった際にアマモの葉が大気に露出していることに着目し(写真-1,2)、アマモが大気からもCO2直接吸収することができるのではないかとの仮説を立てました。そして、海草が密に生息している北海道の風蓮湖を対象とし、現地観測、化学分析、そして統計解析を実施しました。

その結果、風蓮湖の浅い海に生息するアマモは、光合成に利用する炭素の内、平均17%を大気中CO2から吸収していることが分かりました(図-1)。水中のCO2のみを利用しているという従来の考え方とは異なり、アマモが大気中のCO2を予想以上に直接吸収していることが実証されました。アマモが海面に顔を出す際、アマモの葉上に薄い水の膜が残り、CO2のガス交換が促進されていると考えられます。

水底質の悪化や浅海域の消失により、地球全体では海草場の面積は急激に減少していると報告されています。本研究の成果は海草場の保全・再生が二酸化炭素濃度上昇の抑制に寄与することを示しており、気候変動緩和に貢献するものと考えられます。

【成果の意義】
本研究成果は、海草の存在が沿岸浅海域におけるCO2の吸収,そして炭素の隔離や貯留において重要であることを示しており、今後の保全や再生における新たな意義が付加されます。

 

 

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図-1
本研究で明らかになった海草による大気中の二酸化炭素(CO2)吸収。海草は光合成に利用する炭素を海水中からだけではなく,約17%を大気中CO2からも直接吸収していることが分かりました。干潮時にアマモの葉が大気に露出する際、葉上に薄い水の膜が残り、薄膜を通してCO2のガス交換が起きていると考えられます。
 

【海草場の様子】

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写真-1 風蓮湖の海草(アマモ)場

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写真-2 アマモが大気に露出している様子

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