沿岸土砂管理研究グループ

沿岸砂州周辺の沿岸流の岸沖分布

Coastal and Estuarine Sediment Dynamics Group

砕波帯内では地形変化や生態系に影響を及ぼす沿岸流(海岸に平行な流れ)が発達する。沿岸砂州周辺の沿岸流の岸沖分布の特性を波崎海洋研究施設で観測された52例の現地観測結果(図-1)を基に検討した結果、従来の知見とは異なり、観測された沿岸流の岸沖分布の大半(約85%)において沿岸流速の極大値が砂州頂部よりも岸側で生じていたことを明らかとなった(図-2)。
 沿岸流速分布に関する従来のモデルでは、沿岸流速の極大値は砂州頂部よりも沖側でしか生じ得ないことから、新たに、砕波による付加的な運動量輸送メカニズムを組み込んだ流れのモデルを開発した。図-3の上段は、沿岸流の実測値と本モデルによる計算値(太い実線)、既往のモデルによる計算値(細い実線と破線)とを比較したものである。本モデルは、既往のモデルでは再現できなかった砂州頂部よりも岸側で発生する沿岸流速の極大値を良く再現している。
 現在、沿岸流速の岸沖分布の長期変動特性を検討している。

図-1 沿岸流の観測例

図-1 沿岸流の観測例

上段が沿岸流速を示しており、下段が断面を示している。

図-2 沿岸流速の最大値の発生位置ypeakと沿岸砂州の頂部の位置ybarとの関係

図-2 沿岸流速の最大値の発生位置ypeakと沿岸砂州の頂部の位置ybarとの関係

正の値は沿岸流速の最大値の発生位置が砂州頂部の位置よりも沖側であることを示している。

図-3 沿岸流速と波高の計算値と実測値との比較

図-3 沿岸流速と波高の計算値と実測値との比較

図の上段は、沿岸流の実測値と本モデルによる計算値(太い実線)、既往のモデルによる計算値(細い実線と破線)を示している。図の下段は海浜断面を示している。