沿岸土砂管理研究グループ

沿岸砂州の移動特性

Coastal and Estuarine Sediment Dynamics Group

砕波帯(波が砕けてから岸までの領域)では、しばしば沿岸砂州(バー、longshore bar)と呼ばれる浅瀬が形成される。沿岸砂州を有する海岸の地形変動特性を把握するために、波崎海洋研究施設に沿った約500mの区間において5m間隔で8年間(1987年~1994年)にわたって継続取得した海浜地形断面データ(図-1)を基に、沿岸砂州の数年スケールでの移動特性、ならびにそれと底質移動との関係や、底質移動と外力との関係を検討した。その結果、波崎海岸では沿岸砂州は約1年周期で発生を繰り返し、発生後沖向きに移動すること(図-2)、沿岸砂州は一方向(沖向き)に移動するのに対して各地点の岸沖漂砂は沖向き・岸向きに変動すること、さらに、沖向き漂砂は沿岸砂州の頂部付近で生じ、岸向き漂砂はトラフ領域(深み)で生じること、などが明らかになった.図-2は沿岸砂州の移動と底質移動を模式的に示したものである。
現在、沿岸砂州の移動周期の時間変化を検討している。

沿岸砂州の移動特性の画像1

沿岸砂州の移動特性の画像2

赤っぽい色が堆積領域を、青っぽい色が侵食領域を示している。沖方向距離150mより沖側では、沿岸砂州の移動に対応して堆積領域や侵食領域が1年周期で沖へ移動している。

沿岸砂州の移動特性の画像3

図の中段は沿岸砂州の沖向き移動の前半(冬から春にかけて)の特性を示しており、下段は沿岸砂州の沖向き移動の後半(秋から冬にかけて)の特性を示している。図の中・下段の矢印は底質移動の方向と量を表している。図の上段は沖波のエネルギーの1年間の変動を示しており、矢印はそれぞれ下の断面が形成された時期を表している。断面の線種と底質移動を示す矢印、沖波のエネルギーの図面の矢印の線種はそれぞれ対応しており、例えば、破線の矢印は破線の断面に対応している。