地盤研究領域 土質研究グループ

サウンディング調査

Soil Mechanics and Geo-Environment Group

あるパラメータ(N値、先端抵抗、間隙水圧など)を求め、これと土質定数を関連づける関係式を用いて土質定数を間接的に推定するような原位置試験を一般に「サウンディング」と呼んでいます。

ボーリング孔を用いたサウンディング方法として最も多く実務で用いられているのが標準貫入試験です。標準貫入試験は、63.5kgのおもりを75cmの高さから自由落下させて標準貫入試験用サンプラーを30cm貫入する打撃回数をもって「N値」と称するものです。支持層の判定や砂の相対密度の推定などに良く用いられる試験方法ですが、軟弱地盤への適用には限界があることに注意が必要です。軟弱粘土のN値は、自沈(N=0)の状態から、N=1やN=2という調査結果となることが多いですから、2に近い1もあれば、0からようやく1になったものもあり、同じN値といっても、非排水せん断強度などに直すと2倍近い誤差となって現れてしまいます。その一方で、非常に硬い層があったり、砂礫層が存在したりして静的な貫入が不可能な場合でも、動的な貫入力を与えられる標準貫入試験の場合には調査可能であることが多く、次に説明する電気式静的コーン貫入試験に比べて非常にタフな(地盤条件の変化に対して強い)試験であるともいえます。

次に、最近注目されている電気式静的コーン貫入試験を取り上げます。一般に、先端抵抗qt、間隙水圧u、周面摩擦fsを計測できる三成分コーンが用いられています。コーンの形状は先端角60°、底面積10cm2、周面摩擦計測用スリーブ150cm2で、貫入速度は1.0~2.0cm/sec、測定間隔は貫入方向に細かくとります。図-3.3はコーン貫入試験に用いる三成分コーンのプローブとクローラ付き貫入機の例を示しています。また、写真-3.3には、三成分コーンのプローブを示します。

図-3.3 電気式コーン貫入試験のプローブ(三成分コーン)とクローラ付き貫入機

図-3.3 電気式コーン貫入試験のプローブ(三成分コーン)とクローラ付き貫入機

写真-3.3 三成分コーンのプローブ

写真-3.3 三成分コーンのプローブ

間隙水圧測定用のセラミックフィルター部に作用する水圧分を補正した先端抵抗qtを用いて、粘土の非排水せん断強度は次式で推定されます。

サウンディング調査の画像1

ここで、σv0は全応力で表された土被り圧、Nktはコーン係数と呼ばれているものです。我が国の粘土の場合、Nktの値は10~15程度となりますが、地域性が強く表れるため、他の試験(現場ベーンせん断試験、各種室内力学試験)によってあらかじめ評価しておく必要があります。

先端抵抗qtが小さく、かつ間隙水圧uが大きい深度は粘土層、先端抵抗qtが大きく、かつ間隙水圧uが小さい深度は砂層を表しています。標準貫入試験では、例えば深度1m毎にN値を求めて土質判別を行いますが、電気式静的コーン貫入試験では、連続的にデータを取得することができるため、厚さ数センチメートルの非常に薄い層の存在も見逃すことなく判別することができます。

従来から行われているコーン貫入試験として、オランダ式二重管コーン貫入試験、スウェーデン式コーン貫入試験、ポータブルコーン貫入試験などが知られています。オランダ式二重管コーンは、ダッチコーンとも称されているもので、二重管になっているため地上部で計測される貫入抵抗値から周面摩擦による抵抗分を差し引くことができ、信頼性の高いデータが得られるといわれています。今日用いられている三成分コーンの原型のような存在ですが、電気計測技術の向上により、電気式静的コーン貫入試験にその座を奪われてしまったようです。スウェーデン式コーンは、先端がスクリューポイントと呼ばれるドリル状をしていて、重錘により1kNの荷重をかけたまま回転を与え、1m貫入させるのに要した半回転数(半回転で1回とカウントする)Nswを記録します(試験では25cm 貫入するのに要する回転数を記録し、1mの貫入に換算します)。2人がかりで人力により回転させて調査することを前提とした装置(だから、半回転で1回とカウントする)で、宅盤調査など小規模な調査に良く用いられる方法です。ポータブルコーンは、先端角度30°、断面積6.45cm2を有していて、秒速1cm程度の速さで人力により連続的に貫入させ、10cmごとに押し込み力を測定し、その値を応力に換算します。押し込み力の測定は、力計に取り付けられたダイヤルゲージにより行われ、一切の電気計測を必要としませんので、どこでも簡便に調査を行うことができます。しかし、人力での押し込みですから調査深度は浅いところに限定されてしまいます。写真-3.4に、スウェーデン式コーン(左)とポータブルコーン(右)を示します。

写真-3.4 スウェーデン式コーン(左)とポータブルコーン(右)

写真-3.4 スウェーデン式コーン(左)とポータブルコーン(右)

原位置における非排水せん断強度を直接計測する方法として、原位置ベーンせん断試験があります。ベーンブレード形状は幅Dと高さHの比を1:2とするのが標準で、ロッドを回転する(回転速度は6deg/minを標準とします)とベーンブレードを含む円筒状の部分が回転することにより粘土がせん断破壊します(図-3.7)。計測された最大トルクTmaxを用いて、次式により非排水せん断強度suが求められます。

サウンディング調査の画像2

D:H=1:2となる形状のベーンの場合は

サウンディング調査の画像3

となります。ロッドの摩擦を無視し得ないため、二重管式にするなどの工夫をしたものが一般に用いられています。

 図-3.7 ベーンブレードの形状(左)とせん断のメカニズム(右)

 図-3.7 ベーンブレードの形状(左)とせん断のメカニズム(右)

コーン貫入試験や原位置ベーンせん断試験は、地盤の強度を推定することが主な目的の場合に適用される調査法として位置付けられますが、水平方向の変形係数や静止土圧を求めることを目的に適用される調査法について紹介しましょう。ここでは、孔内水平載荷試験とダイラトメータ試験を取り上げます。孔内水平載荷試験では、ボーリング孔を利用しますが、ダイラトメータ試験では、コーン貫入試験のようにボーリング孔を利用せずに直接貫入していくことによって調査を行うことができます。

孔内水平載荷試験には、プレボーリング型のものとセルフボーリング型のものがあり、プレボーリング型のものは、別途掘ったボーリング孔を利用しますが、セルフボーリング型のプローブは二重管になっていて、先端のビットによってゾンデを回転させることなく掘進でき、孔壁の乱れや応力解放の影響が少ない状態で試験ができるのが特徴です。図-3.8に示すように、ボーリング孔内にプローブを下ろし、ゾンデに圧力水を送り込み、メンブレンの膨張量と注入圧力の関係から、静止土圧、変形係数などを推定します。

図-3.8 孔内水平載荷試験

図-3.8 孔内水平載荷試験

ダイラトメータ試験は、直径60mmの鋼製メンブレンを有するベーンブレード(写真-3.5(左))を地盤中に所定の深度まで貫入し、コントロールパネル(写真-3.5(右))を操作して窒素ガスなどの高圧ガスを供給し、図-3.9に示す3つの状態に対応する圧力p0,p1およびp2を読みとります。

ダイラトメータのブレード

圧力コントロールパネル

写真-3.5 ダイラトメータのブレード(左)と圧力コントロールパネル(右)

図-3.9 ダイラトメータ試験において圧力を読みとる3つの状態

図-3.9 ダイラトメータ試験において圧力を読みとる3つの状態

ここで、u0は間隙水圧(静水圧)、Eは変形係数、eはひずみを表しています。計測値のうち、p0とp1を用いて、次式により2つのインデックスと1つの係数が求められます。

材料インデックス:

材料インデックス:

水平応力インデックス:

水平応力インデックス:

ダイラトメータ係数:

ダイラトメータ係数:

材料インデックスは、ID<0.6で粘土、0.6<ID<1.8でシルト、1.8<IDで砂質土と分類する方法が提案されています。水平応力インデックスは静止土圧係数K0の推定に、また、ダイラトメータ係数EDは水平方向の変形係数の推定に用いられるとされていますが、理論的な裏付けが無いために経験式に基づいた推定とならざるを得ないのが実情です。その点、先に示した孔内水平載荷試験の方が力学的なバックグラウンドが明瞭であるといえるでしょう。ダイラトメータ試験では物理量を計測しているのではなく、インデックスを求めているのだという認識が必要だと考えられます。